最終更新日:2021.10.08
以前にこのコラムで城西大学水田美術館が主催となって実施した公開講座の中でリモートでの講演にて、四苦八苦したことを書き綴りました。今回は久しぶりに対面形式での講演を行ったのでそこで感じたことについて触れていきたいと思います。
おきみゅーの学芸員講座は5月からの臨時休館により、リモート形式での開催が続いていました。今月に入って緊急事態宣言が解除されたことにより、10月2日に対面での学芸員講座を約4か月ぶりに行うはこびとなり、その初回を引き受けることになりました。と言っても7月に実施予定だった学芸員講座が臨時休館によって、10月へ延期となったことから期せずして、緊急事態宣言解除後そして、臨時休館明け初の学芸員講座としてお鉢が回ってきたことになります。
(写真:7月10日に開催予定だった学芸員講座のチラシ)
臨時休館が解かれてから1発目の学芸員講座ということもあって気持ちを新たに講演に挑むつもりでしたが、参加者の数は30人台と、いつもの学芸員講座と比べてかなり少ない印象でした。今回のタイトルが「グスクの城壁に見る沖縄の独自性」という、あまりにも大人げない専門的なタイトルであったからなのかと、始まる直前に少し思い悩んでしまいました。
だからと言って話の質を落とす訳にはいかないので、与えられた90分の時間を一気に使い切って、グスクの石積みについて詳しく触れていきました。グスクに見られる石積みの変遷や他地域との違い、石積みの内部構造や変化していく理由など、かなりの密度で話をしたため、参加されていた方々はどこまで話の内容についてこれてきたのか、終わった後に心配になりました。
(写真:講演時の様子)
しかし、そのような心配とは裏腹に講演後の質疑応答では芯を食った質問が立て続けに出ました。詳しく紹介するとかなりの量になるので省きますが、主に石積みの力学的構造における問題や、石材の供給地と石材加工の様子について、沖縄の石造技術に係わる職能民についてなど様々な質問が参加者から挙がりました。これらの質疑応答を通して、良く聞いて理解していた方が多くいらっしゃったことに嬉しさを感じました。と同時に、参加者との直接対話はリモートでは味わえない醍醐味であることを新たに感じました。
今回の質疑応答を通して質問された方々が知的欲求として何を知りたいのか、そしてこれから何を明かにしてほしいのかを汲み取ることができました。このような遣り取りは後に自身の試金石となり、次のステップへと繋がっていくものと思われます。
(写真:参加者からの質疑応答の様子)
学芸員講座を行うにあたって対面形式かリモート形式かは、それぞれ一長一短であると感じました。リモート形式では遠隔地からの参加が可能で、体の不自由な方や時間的に都合がつかない方にとっては参加しやすいというメリットがあります。対面形式では開催日、開催場所に集まれる方といったように参加者が限られてしまいますが、講師と直接対話できるといったメリットがあります。
話をする側から見るとどちらが良いのかは講演者によるところが大きい思われます。個人的には講演中でも参加者との距離が近く感じられる対面形式の方が、話をした達成感が残るのを今回の学芸員講座を通して強く感じたので、できればまた、皆さんの前で話ができればと思っております。
最後に
今回の学芸員講座の様子はスタッフの皆さんが頑張っていただいたおかげで、youtubeにて近日中に動画として上がります。ご興味がある方はぜひご覧いただけれたらと思います。
主任学芸員 山本正昭