沖縄県立博物館・美術館の白亜の建物に日差しがそそぐ夏がやってきました。夏休みということもあり、子どもを含む多くの方々が来館されていることに感謝申しあげます。
博物館の常設展示場はリニューアルしていないとよくお叱りをいただきます。しかし、部門展においては2・3ヶ月間単位で新しい展示をしています。例えば美術工芸部門展示室では5月23日から8月13日まで、『アニマル!あつまる!!美の世界!! Part2!』、歴史部門展示室では8月4日から9月10日まで『重要文化財指定記念 銘苅家文書(めかるけもんじょ)と琉球国王朱印状』と題して期間限定の展示を行っています。骨格となる展示においても、半年から1年の間隔でストーリーを壊さないように配慮して原資料を入れ替えて展示しています。入れ替えるのは、貴重な原資料保存のためでもあります。また、月一回学芸員全員で掃除を行い、資料を点検し、資料をみながらお互い同士研究し合う場にもなっています。
6月21日から9月3日にかけて、博物館では特別展『進化展-命はつながっている-』が開催されます。「多様性」が命をつなぐ「進化」のキーワードです。生命の歴史から今を考えることができる展示となっていますので、ぜひご覧ください。また、9月22日から11月19日まで企画展『海を越える人々(前期) 琉球と倭寇(わこう)のもの語り』が開催されます。倭寇を直訳すると「日本海賊」です。それは明(中国)や朝鮮王朝によって作られたイメージです。特別展では海を越える日本・中国・琉球の人々の営みを考古資料、歴史資料をもとに展示します。
美術館では『MINIATURE LIFE展2 田中達也 見立ての世界』が、7月12日から9月3日まで開催されています。本展覧会のチラシにみるように、ハンバーガーのパンが落下傘にみたてられ、“パン”ラシュートと名付けられています。見立ての世界を写真で表現する田中達也ワールドに魅了されるとともに名付けも楽しめます。会場にはMINIATUREも展示され、自由に写真を取ることができ、自分の作品を味わうこともできます。ちなみに『進化展』にあわせての企画、博物館常設展の美術工芸部門展示『アニマル!あつまる!!美の世界!! Part2!』では、扇が羽、菊の茎が触覚として蝶の「見立て」織物が展示されています。
また、7月14日から2024年1月14日までの予定で、美術館コレクション展が始まっています。美術館ではコレクションギャラリー1では、謝花謙さんの学生時代の作品、米軍基地周辺を走る若者たちを描いた《ヒッチ・ハイカー》、高校時代の具志堅用高を描いた《ヤマングーヌティーダ》をデジタル化して上映しています。謝花謙さんは現在も「ウチナー紀聞」(RBC琉球放送)で作品を作り続け、最近では3月26日に「羽地朝秀(はねじちょうしゅう)」を放映しています。
コレクションギャラリー2では『大和コレクション展vol.9:アートの愉しみ』、コレクションギャラリー3では『沖縄美術の流れ』が展示されています。二つの展示の個々の作品を見る時、左右、遠近を意識してみると、立ち位置で異なることに気づかされ作品の深さを実感しました。また、『沖縄美術の流れ』では音声ガイドも準備しています。
最後になりましたが、博物館・美術館が、「知と心の交流場所」となるよう、館長として力を及ばずながらつくしていきます。みなさま、よろしくお願い申し上げます。
2023年8月
沖縄県立博物館・美術館
館長 里井洋一