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描かれているのは、首里城のふもとにある「龍潭」という池のほとりの風景です。風に揺れる水面、草に覆われた石積みの岸辺、道を行き交う人々、そして赤瓦の家並み。在りし日の首里の、穏やかな日常が描き出されています。
画面中央には、アーチ形の世持橋が見えます。その奥に続く長い石垣は、かつて琉球王国の世継ぎの邸宅であった中城御殿を囲んでいた外壁です。世持橋も中城御殿も、沖縄戦で失われました。今ではこの石垣だけが残り、当時の姿を伝えています
大嶺政寛がこの作品を描いたのは、1943年。戦争の気配が次第に迫っていた時期でした。それでもこの絵には、いつもの暮らしの穏やかな空気が静かに流れています。