一面緑が広がる草原の中に、戦車が打ち捨てられています。
戦車の大部分はサビて変色し、転がった部品の中から草が伸びています。その様子から、長い間この場所に放置されていることがわかります。
この作品は1950年に、かつて激戦地の一つだった沖縄本島中部の西原を描いたとされています。
終戦から5年経ってもなお残る戦争を思い起こさせる風景には、もの悲しさが漂っています。
作者である大嶺は、戦前、美術教師をしていました。しかし、教え子がひめゆり学徒隊として動員され、その多くが命を落としてしまったことから、二度と教壇に戻るまいと心に誓ったと言います。
この作品からは、虚しさややりきれなさといった大嶺の心情が表れているようにも感じます。