最終更新日:2022.05.23
現在地球上には77億を超える人類が分布しています。地球の陸域は表面積の約30%にあたる1億5000万㎢で、日本の国土面積(約38万㎢)の約400倍です。地球全体で見ると人口密度は約50人/㎢、日本の人口密度は約331/㎢、沖縄県の人口密度は約640人/㎢、那覇市に限ると約8000人/㎢となります。しかも世界人口は、鈍化しつつあるとは言え、年率1%を越える増加率で今後も増加していくと言われています。生物学の分野では、体重60キロ程度の「雑食大型動物」の適正密度は、1㎢あたり1~2頭と言われていますから、現代における人類の繁栄は、地球の歴史においても「未曾有の出来事」ということになるでしょう。
他の生き物とは大きく異なる社会や文化をもち、高度な文明を発展させてきた私たち人類も、進化の過程で誕生した当初は、とてもか弱い存在でした。人類は哺乳綱サル目(霊長目)ヒト科に属し、サルの仲間との共通祖先から進化して誕生しました。ヒト科には狭義のヒト(ヒト属:Homo)以外に、オランウータンやゴリラ、チンパンジーなどの類人猿、そして最も初期の人類である猿人の仲間が含まれています。D N A から見ると、ヒトとゴリラの違いは2・3%、ヒトとチンパンジーとの違いは1・3 % で、チンパンジーはゴリラよりもヒトと近縁です。
現在、地球上に生息する人類は、ヒト属の一種ホモ・サピエンス(Homo sapiens)のみで、黒人も白人も、アジア人も、すべてこのホモ・サピエンスに含まれます。私たちの祖先は、約5万年前以前には皆アフリカに暮らしており、5万年前以降に世界各地に広がっていきました。人類の進化は、猿人、原人、旧人、新人という4つの段階に区分され、その中にはホモ・サピエンス以外にも多くの種が含まれています(図1)。これまで各地で発見された人類化石の頭骨を見ると、進化の過程で脳頭蓋の大型化や顔貌の変化が進行し、次第に現代人的な形質が獲得されていった様子がわかります(図2・3)。
また、原人や旧人はアフリカを出てヨーロッパやアジアにも進出していたことが知られています(図1)。ジャワ原人や北京原人、ネアンデルタール人、デニソワ人などは、アフリカの外に広がった原人や旧人の仲間です。しかし、彼らは進化の過程で、次々と生まれ出た新たな特徴を持った種と競合し、絶滅していったと考えられています。ただし、近年の分子生物学的研究から、現代の私たちの中にも、ネアンデルタール人やデニソワ人に由来するDNAがわずかに残されていることが明らかにされており、ホモ・サピエンスが世界各地に拡散する過程で、古代型人類と交雑した証拠だと考えられています。
図1 人類の進化(図中の番号は図2・3の番号に対応:クリックすると拡大します)
図2 頭骨写真(正面)(図中の番号は図1の番号に対応:クリックすると拡大します)
図3 頭骨写真(側面)(図中の番号は図1の番号に対応:クリックすると拡大します)
沖縄で発見された約2万2000年前の港川人(図2・3:10)も、約5万年にアフリカを出て世界に広がったホモ・サピエンスの一員です。沖縄からは、港川人をはじめ、白保竿根田原洞穴人(約2万7000年前)。山下町第一洞穴人(約3万6000年前)、ピンザアブ人(宮古島)など、数多くの旧石器人骨が発見されており、東アジアでも有数の人骨化石集中エリアとなっています。
沖縄県立博物館・美術館では、沖縄の旧石器人骨の調査研究に取り組んでいます。これまでの成果については、本コラムでも紹介していますので、ぜひご覧ください!
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武芸洞の発掘2
武芸洞遺跡の石棺墓と沖縄先史時代の葬墓制
新発見!12000年前の石英製石器と人骨について(上)
新発見!12000年前の石英製石器と人骨について(下)
サキタリ洞人の発見
サキタリ人骨、クリーニング中
博物館特別展「港川人の時代とその後-琉球弧をめぐる人類史の起源と展開」にむけて (3)
顔料の来た道
主任学芸員 山崎真治