1. 【国際博物館の日2024】琉球美術における「虎に翼」

【国際博物館の日2024】琉球美術における「虎に翼」

最終更新日:2024.05.14

 4月より某放送局で「虎に翼」というドラマが放送されています。この「虎に翼」とは、もともとは中国春秋戦国時代の『韓非子(かんぴし)』という本の一節が由来になったことわざで、「強い者がさらに勢いを増すこと」という意味があります。
 

琉球の絵画資料に見る「飛虎」

 さて、そんな「虎に翼」ということわざですが、実はこのことわざが由来になっているのではなかろうか思われる文様が琉球にもあります。それが「飛虎(ひこ)」と呼ばれるものです。この文様は、当館が所蔵する琉球人江戸入(えどいり)錦絵(にしきえ)(図1)や冊封使(さくほうし)行列絵巻(図2)等、江戸立ちや冊封使来琉の行列の中で掲げられている旗に確認することができます。単純に「虎旗」と書かれている場合もありますが、よく見ると虎の背中からコウモリの翼のようなものが生え、翼の先についた手には願い事をかなえるとされる宝珠を握っています。残念ながらこの旗の実物は今のところ確認されていません。
  図1 琉球人江戸入錦絵
図1 琉球人江戸入錦絵

図2 冊封使行列絵巻
図2 冊封使行列絵巻
 

コウモリか「飛虎」か?

 しかし、当館が実施している「琉球王国文化遺産集積・再興事業」において、これは飛虎なのではないか!?という資料に出くわしました。それが玉陵(たまうどぅん)の勾欄羽目(こうらんはめ)です。この羽目板は参考資料などではコウモリとして紹介されていますが、復元をする際に「コウモリにしては紅型(びんがた)や漆器に表現される姿形と違いすぎる」という話になり、文様の再検証も兼ねて現地で拓本を採ることになりました。すると、長年の風雨で摩耗し肉眼では見えなくなっていたタテガミや翼の先についた手が何かを握っていることがわかりました。これにより、長らくコウモリとされていたこの羽目板は、もしかすると飛虎なのではないかということになりました。
 

情報を記録し、残す

 石という素材は、非常に強い耐久性を持つ素材です。そのため、玉陵は( 後補や修理は入っていますが)500 年以上たっても姿形を保っています。そこにあしらわれる文様は、古琉球期の文様や意匠を残している可能性があるため、石彫刻の情報を集めることは琉球の古い時代の美を知る一つの手がかりになるかもしれません。そして、その復元を行うことは、やはり古い時代の美を知る手掛かりの一つになると考えられます。
 しかし、どうしても経年の風化で細部は無くなっていくことを思うと、急ぎ情報化すること、そして復元をとおしてその形や技術を明らかにしていくことがとても重要なのです。

玉陵勾欄羽目
玉陵勾欄羽目(模造復元品)
写真をクリックすると3Dモデルが閲覧できます。

【注意事項】
・ここで紹介する3Dモデル(アニメーション)は、沖縄県立博物館・美術館 屋外展示場 展示資料にもとづいて作成したものです。
・3Dモデルの作成には、iphoneアプリの「Scaniverse - 3D Scanner」を使用しました。
・アプリおよび3Dスキャン作業の性格上、3Dモデルには誤差や不正確な部分がありますので、利用の際にはご注意ください。
・データを引用する場合には「沖縄県立博物館・美術館 所蔵」のクレジット表記をお願いします。

学芸員 伊禮拓郎

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