1. 平和の想いをめぐらせる-「慰霊の日」パネル展-

平和の想いをめぐらせる-「慰霊の日」パネル展-

最終更新日:2021.06.24

 「慰霊の日」という日を皆さんはどう過ごされていますか。
 沖縄戦で犠牲となった戦没者に対して鎮魂の祈りを捧げる方もいれば、二度と戦争が起こらないように平和な社会の実現を願う方もいると思います。そして、76年前の辛い戦争体験を思い出し、心を痛める方もいらっしゃることでしょう。6月23日の「慰霊の日」は、このような人々の様々な想いが、目に見えない力となって各地の隅々にまで行きわたり、平和で豊かな沖縄県を形成していく日であってほしいと私は思います。
 沖縄県立博物館・美術館では毎年「慰霊の日」に関連したパネル展を開催しています。今年も6月15日から27日までの約2週間開催を予定していましたが、緊急事態宣言発令による休館措置のため中止となってしまいました。展示の準備を進めていただけに、本当に残念なこととなりました。(写真1)今年の展示は「沖縄戦を生き抜いた人々と平和への願い」をテーマに、想像を絶する戦争を生き抜いた人々が新たな生活を送り出した場面に焦点をあてました。(写真2)戦後の人々の生活は、田井等、石川、前原など各地に設置された収容所からのスタートとなりました。戦争が終わったとはいえ人々の生活は厳しく、十分な食料もありませんでした。(写真3)まさに、衣食住の全てにおいてゼロから始まりました。また、学校も再開されましたが、校舎が戦争で焼失したため青空教室やテント教室がほとんどでした。(写真4)当時の人々の心境を考えると、大切な人を戦争でなくし悲しみに打ちひしがれるところだと想像できますが、沖縄の人々はそのような状況下にあっても力強く生き、生活を再建させていきました。このような心の強さが、今の社会の礎を築いていったのではないかと私は考えます。
 多くの住民を巻き込み、唯一の地上戦となった沖縄。凄惨な戦いを経験したからこそ平和を願う気持ちは強く、その想いは戦後様々な形で表現されてきました。今回のパネル展においては、沖縄戦を題材にした映画の台本等も取り上げました。(写真5)「ひめゆりの塔」は、沖縄師範学校女子部と県立第一高等女学校の職員、生徒らで編成されたひめゆり部隊の姿を描いたもので1953年に公開されました。まだ若い彼女たちが何のために苛酷な戦場へと駆り出され、何のために命をおとしてしまったのか、真剣に考えなければならないと感じさせられました。また、同年に公開された「沖縄健児隊」は元沖縄県知事の故大田昌秀氏と戦後の沖縄研究で多大な功績をおさめた故外間守善氏による原作となっています。両氏ともに沖縄師範学校在学中に師範鉄血勤皇隊として沖縄戦に動員され、多くの学友を失う経験をしています。「GAMA-月桃の花-」は戦後50年の節目に製作されました。上記の2作品とは異なり、沖縄戦を生き延びた一人の女性の目線から戦後の生活と戦争の悲惨さを表現しています。
 また、沖縄県立博物館の常設展では、沖縄戦で多くの銃弾をあびた痕跡を残す「旧首里城正殿鐘」や10・10空襲で被害を受けた「旧波上宮朝鮮鐘龍頭」等の多くの文化財を展示しています。是非、博物館に足を運んで頂き、戦争の実態や平和への想いをめぐらせる機会にして頂きたいと思います。


写真1 展示風景(1)


写真2 展示風景(2)


写真3 収容所での米の配給


写真4 木陰で教育を受ける子供達


写真5 沖縄戦を題材にした映画の台本
 
主任学芸員 宮城 修


 

主任学芸員 宮城 修

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