1. 【国際博物館の日2021】未来に託す-博物館の役割-

【国際博物館の日2021】未来に託す-博物館の役割-

最終更新日:2021.05.21

書庫整理をした際にみつけた書籍とそれにまつわる話
 『紅型(びんがた)』と題されたこの本には、1928(昭和3)年、東京と京都の呉服店で開催された紅型の展覧会の出品作が掲載されている。山村耕花が編集し、岡田三郎助が校訂し、伊波普猷が解題をまとめ、紅型が36点所収されている。この豪華本は1950年、沖縄文化協会(東京)、在米沖縄復興連盟(北米)の両者からの寄贈である。終戦から5年が経過し、紅型は、3年程前からようやく再スタートした頃である。
 紅型の城間榮喜氏が、戦後、多くの作品を失ったなかで、模様や配色の参考としたものに、博物館の本と大嶺政寛氏が鎌倉芳太郎氏より複写した紅型の型紙等を挙げている。ここに出てくる「本」の一つがこの『紅型』になると思われる。
 この当時から博物館は工芸の再興に関わっていた。2年後(1952年)、博物館は城間氏から7領の作品を購入。紅型再興へのステップアップだと、当時の職員は考えていたのかもしれない。その後、紅型は沖縄を代表する工芸へと展開し、35年後には、生産額を5億8千万円(1985(昭和60)年度)へと伸ばしている。この数字からも、経済発展に文化の復興がリンクしていることを理解してもらえるのではないか。
 今のコロナ禍と戦時から戦後にかけての状況はよく似ており、このような時代にこそ、我々博物館人の地道な活動が未来への扉を開くのだと強く思うのである。
 

『紅型』合資会社工藝社 帙(ちつ:箱)の表(おもて)(部分)
 

『紅型』奥付
美術工芸担当 主任学芸員 與那嶺一子

美術工芸担当 主任学芸員 與那嶺一子

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