最終更新日:2018.03.29
出発前から激しい雨。私は晴れ男なのですが、、、。多少の雨では、決行する予定ではありましたが、早朝から降り続く雨と、夕方まで降り続く予報に、本当に実施して良いものかと、大変悩みました。このような状況でも、必ず楽しみにしている人がいるはずとの先輩職員の声に、迷いは吹き飛び、実施を決定しました。天仁屋は、海岸部で足場も悪いため、雨の中の実施は厳しいが、底仁屋であればなんとかなるだろう、その間に雨があがれば、、、という作戦です。
今年の学芸員講座ジオツアーは、「名護市嘉陽層の褶曲」。
嘉陽層は沖縄島東海岸を中心に広く分布しています。その中でも名護市底仁屋と天仁屋の露頭は、見事な褶曲や断層が見られるため国指定天然記念物になっています。
集合場所の大浦わんさかパークに着いても、さらに激しく降り続く雨。その中、続々と参加者の皆さんが集まってきます。その中には、このジオツアーのために前日から名護に宿泊、当日にもう1泊するという方もいらっしゃいました。集まった皆さんは、全員、雨具を身につけ、行く気満々です。これを見て、どうせやるなら、全力でやろうと思いました。
底仁屋では、さらに激しく降る雨の中、観察、解説を行いました。雨で濡れた露頭は、乾いた状態より見やすく、雨水が大地を洗い浸食する様子が見られたのは、晴天時にはないことでした。
天仁屋海岸近くでのトイレ休憩の間に、天仁屋海岸の状況を確認しましたが、朝から降り続く雨によって、足場はさらに悪くなり、川は増水し、海岸部の海食崖は崩れる恐れもありました。
参加者のやる気と気合でなんとか雨を止ませて、実施する予定でしたが、安全が第一です。やりたい気持ちをグッと抑えて、途中での中止をお伝えしました。
野外の活動では、天候の問題は付き物です。今回は、悪条件の中、ツアーの実施の在り方について、色々考えさせられました。途中からのコース変更案もあったのですが、さらに激しさを増す雨と雷に中止を決意したのでした。
今回、メインの観察地となる天仁屋海岸は、約2kmにわたって、激しく褶曲した地層や断層、様々な堆積構造、生痕化石など、地学の教科書に出てくるような事象が連続して見られ、ダイナミックな地球の活動を実感できる沖縄県内では数少ない大変魅力的な場所です。しかし、それらを観察するためには、天候はもちろん、潮の時間をはじめ、潮位など、注意しなければならない点が多数あります。注意を怠ると戻れなくなる恐れがあり、注意を要する場所です。したがって、単独で行くことは避け、複数で、そして必ず現地をよく知っている人やガイドと同行するようにしてください。
当日の3月3日は、雨天というだけでなく、旧暦の1月16日(十六日祭:沖縄では「後世(あの世)の正月」)であり、特別な日にあたりました。計画段階の1年前には、それに気づかず、申込時に苦情もあったと聞きました。そうした中、参加頂いた皆様には、感謝の気持ちでいっぱいです。
来年の学芸員講座では、旧暦の行事も確認し実施日を決定し、今から天気の神様に願っておきます。そして来年は、最後まで必ず行きましょう。雨の中、参加頂いた皆様、ありがとうございました。
主任学芸員:宇佐美 賢