1. 特別展「琉球弧の葬墓制」のずばり!見どころ

特別展「琉球弧の葬墓制」のずばり!見どころ

最終更新日:2015.11.18

平成27年9月25日(金)より博物館特別展「琉球弧の葬墓制―風とサンゴの弔い―」を開催しています。本展示会は、プロローグからエピローグまで合計7つの章からなり、奄美諸島から八重山諸島までの琉球弧の中でみられる多様な葬墓制について取りあげています。展示会に向けて約1年にわたって調査し準備するなかで、琉球弧には実にさまざまな葬墓制の形があることがわかりました。それらを時代や地域に整理することの難しさを痛感しながらも、できる限り多くの事例を紹介することに努めました。

まず、展示会の概要を簡単に説明します。
琉球弧では、先史時代から近世まで「土葬」「風葬」「火葬」等の葬法が並行して営まれていたということが明らかになっています。先史時代の琉球弧の遺跡を概観すると、埋葬墓(土葬)もあれば崖葬墓(風葬)もあります。徳之島のトマチン遺跡や読谷の木綿原遺跡などは石棺墓タイプの埋葬墓。具志川島の岩立(しいだち)遺跡は、風葬し改葬した痕跡がみられる崖葬墓。なんとここでは、骨になった後焼かれたものや遺体のまま焼かれた骨が見つかっていて、大変興味深い遺跡です。このような遺跡からの出土品を一挙に公開した展示は例になく、今回の目玉の一つです。骨を介して縄文期の人の葬り方や被葬者の死因、あるいは副葬品などのさまざまな情報を読んでみて下さい。

つぎに、近世の章では、葬墓制の記録がある史料を集めて展示しました。この時期から沖縄諸島では「風葬」に収斂していくようですが、奄美諸島では薩摩の影響を受けて「風葬」から「土葬」へと変化していきます。琉球弧では、一次葬の葬法は違えども、風葬又は土葬で骨化した骨は、ある程度の期間を経て再び取り出し洗骨して葬り直します。いわゆる「洗骨改葬」を行う点で共通しています。

さて、沖縄では「風葬」と「洗骨改葬」の慣行が昭和30年代頃まで続いていました。しかし、葬送儀礼の面では、村の人たちが相互扶助で行った葬式や野辺送りなどが葬儀業者に代行されてほとんど見られなくなりました。本展では、そのような伝統的な儀礼が残っている西表島祖納と与那国島祖納の事例を、映像や龕等の実物資料で展示しました。ぜひ貴重な記録をご覧下さい。

つぎに、洗骨改葬をともなう風葬を行っていた沖縄の墓について、原寸大の破風墓の模型で内部構造を復元し、その機能を説明しました。また、岩陰に設置された木槨墓の柱や屋根の部材、今帰仁村運天の堀込墓の板門墓の戸板など、現在でもわずかに残っている木の墓を紹介します。さらに、奄美諸島から八重山諸島までの各地にある墓の写真を地域ごとにわけて、多様な形態の墓をご覧いただけるよう工夫しました。

墓の内部には、風葬のためのシルヒラシ所という空間と、洗骨した骨を安置する納所(墓の中に設けられたイケやクムイと呼ばれる凹み)、あるいは洗骨した骨を納める厨子を安置する棚や壇からなります。そこに置かれている厨子にも、時代や地域によってさまざまな形があります。また、厨子に書かれている銘書(ミガチ)から年代や被葬者の情報を読み取ることなどを紹介します。

この章の最後に、洗骨儀礼についてのコーナーを設けました。今では火葬に変わったので、洗骨自体はほとんどが行われなくなりましたが、2000年代に行われた与那国島と与論島の事例を紹介します。火葬になった現代でも、洗骨は骨を移すときなどにその名残を留めています。その一つの事例として、糸満市糸満のジョーアキー(墓開き)儀礼を映像で紹介します。

最後のコーナーでは、火葬の普及に大きな影響を与えた「辻原の墓地移転事業」と「喜如嘉の火葬場建設」などに焦点をあてて、風葬から火葬への過渡期を見ていきます。そして、市町村が行っている墓地基本計画やアンケート調査の結果等から、現代の葬墓制の課題を探り、将来への展望を考えていく場所を提供しています。

以上、特別展を概観しました。限られた空間の中で琉球弧の葬墓制を語るには限界がありますが、琉球弧の多様な葬墓制の一端でもご理解いただければと思います。本展の企画段階では、葬墓制という日常の世界ではタブー視されるテーマだけに、資料が集まらないのではと心配しましたが、今回たくさんの皆様のご理解とご協力により、思った以上に調査の機会を得ることができ、貴重な資料をご提供いただいたり、撮影を許可していただきました。担当学芸員として、今回の経験は何事にも代えがたいものになりました。ご協力いただいた皆様にはこの場を借りて厚く御礼を申し上げます。そして一人でも多くの県民の皆様に見ていただきたいと思います。

最後に、本展示会をより一層理解していただくため、「見どころシート」と題して簡単なリーフレットを作成しましたのでご案内します。展示会の中でぜひ見てほしい資料に簡単な解説を加えています。入場の際にお配りしますので、ぜひこれを片手にごゆっくりと展示をご覧下さい。

なお、「見どころシート」は展示会会期途中できたため、前半でご覧いただいた皆さんにはお渡しできませんでした。ご希望の方は展示会の会場までお運び下さい。

本展は、今月23日(月)まで開催しています。また、11月21日(土)午後2時~5時まで、文化講座「死者とつながる琉球弧の哭きうた(葬送歌)の世界」と国場の念仏エイサーの上演を予定しています。多くの皆様のご来場を心よりお待ちしています。

  • 見どころシート(表面)

    見どころシート(表面) ※クリックすると拡大画像がご覧になれます。

  • 見どころシート(裏面)

    見どころシート(裏面) ※クリックすると拡大画像がご覧になれます。

主任学芸員 大湾ゆかり

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