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護佐丸の実態とは①

最終更新日:2026.06.17

はじめに

 護佐丸というとその人物像は「忠臣」や「英傑」「英雄」といったイメージを多くの方々が抱いていると思います。組踊の演目『忠臣護佐丸』や『二童敵討』や現代劇にて護佐丸を主役にして取り扱った時に演じられる「護佐丸」により、冒頭にあるイメージのような印象を受けることにその要因はあります。よって、護佐丸は琉球史の中でも非常に人気のあり、そして今でもその生き様に心打たれる人も多く存在します。
 しかし、このようなイメージで語られるのは護佐丸が亡くなって約250年を経てからであると共に、現代に見られるような護佐丸の人物像としての原点として『中山世譜 蔡温本』として挙げることができます。

1.つくられた?英雄像

  『中山世譜 蔡温本』は1724年から編纂が始まり、1876年までの150年にわたって書き綴られています。この中で窺うことができる護佐丸は「忠義の人」「英武倫を越ゆ」といった表現を当てています。加えて、護佐丸・阿麻和利の乱についての顛末も細かく記されていることから、現在見ることができる護佐丸のイメージに近しいものがあります。
 このような護佐丸のイメージで描かれるようになった背景としては、17世紀後半に編纂された『毛氏家譜』の存在があります。護佐丸の三男より続く毛氏豊見城家は護佐丸の嫡流として、17世紀には首里王府の役人として仕えていました。士族としての家柄である毛氏豊見城家は家譜を首里城の系図座へ提出するために1689年頃、『毛氏家譜』は作成されました。その際に毛氏豊見城家では伝承として残っている護佐丸の事績をまとめて、家譜に記録することになりました。そして、後の1724年に『中山世譜 蔡温本』をまとめるにあたってこの『毛氏家譜』に記されている護佐丸に関係する情報を拾い上げて記した可能性が大いにあります。

2.1600年代の史料に見られる護佐丸

 それでは『中山世譜 蔡温本』よりも前に護佐丸はどのようなイメージで捉えていたのか。
 まずは琉球王国にて最初の正史とされる『中山世鑑』を見てみると護佐丸の名前は見られず、更に護佐丸・阿麻和利の乱についても記されていません。1416年に読谷山按司が山北討伐のために中山勢の一翼を担ったとあるのが、読谷山按司すなわち護佐丸について唯一の記述であると言えます。
 護佐丸の名が史料上で初めて見られるのは1697年から1701年にまとめられた『中山世譜 蔡鐸本』になります。
 この中で護佐丸は1458年に勃発した護佐丸・阿麻和利の乱の中の登場人物の一人として記されています。護佐丸は中城グスクを居城としていたことにより阿麻和利による反乱の企てを牽制したとあり、この反乱が勃発した際には阿麻和利によって討たれたといったようにかなり短い文章でまとめられています。しかも、勃発した詳しい年代も記されていません。
 『毛氏家譜』はすでに成立しており、そこに記された護佐丸の情報がこの『中山世譜 蔡鐸本』にも反映されているものと思われるますが、それにしてもかなり淡泊な内容で護佐丸が扱われています。
 以上のことから1600年代までは首里王府、すなわち第二尚氏にとって護佐丸の存在感はとても薄かったと言えます。
 

3.ベールに包まれた護佐丸像

 15世紀中頃に活躍した護佐丸は18世紀に入ってからその人物像や出来事、そして周辺人物などの詳細が綴られるようになったと言えます。そして、当然ながら18世紀に入ってから記された護佐丸の情報全てが史実と見るにはとても無理があると言えます。
 そのため、護佐丸が実際どのような人物であったのかということは新たな同時代の史料が見つからない限り分からないと言えます。そして、護佐丸にゆかりのある遺跡、例えば座喜味グスクや中城グスクの発掘調査の成果から、護佐丸の実像を検証していくといったような新たな切り口から踏み込んでいく必要があります。
 
※過去の学芸員コラムにて護佐丸が生きていた時代について、遺跡から読み込むことについて取り上げておりますので、気になる方は下記のURLからアクセスして下さい。
2022.09.27
『尚巴志王即位600年記念シンポジウム忘備録② ~首里城、今帰仁グスク、島添大里グスクから尚巴志の時代を読む~』

http://okimu.jp/museum/column/1664241646/

 現段階では護佐丸の実像について後世の史料で記された内容に依るところが大きいと言えますが、常に新しい検証方法を模索し続けることによって、護佐丸と言う人物の実態が少しずつ明らかになっていくものと思われます。
                                                  (次回へ続く)

◎6月文化講座情報

 沖縄県立博物館・美術館にて『護佐丸のグスク』と題して文化講座を6月20日(土)午後2時から当館講座室にて行います。詳細につきましては当館のホームページをご覧いただければと思います。以下のURLからアクセスをお願いします。
http://okimu.jp/event/1779002279/

◎6月文化講座の概要についてラジオにて紹介しました。

 6月16日にFM21(76.8 MHz)の番組『スマイル情報広場』にて当文化講座について紹介させていただきました。以下にて聞くことができますのでこちらも是非、ご参照ください(動画開始2分40秒あたりから始まります)。








                                                 

主任学芸員 山本正昭

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