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「文庫」とは、本や紙、筆記用具といった、身の回りの品を収めるための箱です。
この文庫は、鮮やかな朱色の漆に、沈金といわれる技法で模様が施されています。
沈金とは、漆の表面に細い刀で線を彫り、その溝に漆をすり込み、金を埋め込んで模様を浮かび上がらせる技法です。
丸い枠の中に、羽を広げた蝶の模様がいくつも配置され、そのまわりを菊や唐草の模様が埋め尽くしています。
固い漆面を刀で彫ったとは思えないほど、のびやかで優美な線からは、金城の卓越した技術が感じられます。
金城は沈金だけはでなく、絵画や書、俳句にも秀でた人物でした。幼い頃から培った確かな技術と多彩な才能が活かされ、伝統的でありながらも、どこか洗練されたモダンな印象を与える作品です。