(前回からの続き)
3.展示図録の作成
『新収蔵品展』は毎年、展示図録を作成することは以前に触れましたが、これも新収蔵品展開催に向けての大切な準備作業になります。図録と言っても20ページ前後の小冊子になります。内容としては主な寄贈資料の写真と資料リストが掲載されている程度の簡易な内容で、展示資料の詳細な解説が掲載されているわけではありません。新収蔵品展の図録とは寄贈者にとっては当館へ大事な資料を寄贈したことの証になるとともに、将来において寄贈したことを誇ることができる記念書としての価値を持ちます(写真1)。
写真1 昨年度の新収蔵品展展示図録
一方で全ての資料が図録に写真掲載されるということではありません。寄贈者の諸事情により、掲載を控えていただきたいといったことや、資料数が膨大な量であることから掲載することができないなどの理由により、図録に掲載するべき写真は事前に確認していく必要があります。
また、多くの寄贈者が毎年おられるので、寄贈者情報が錯綜して寄贈者名に齟齬が生じがちになります。寄贈していただいたのに名前に誤りがあることは大変な失礼になりますので、何度も確認を取って間違いの無いように努めています。
4.令和7年度に展示予定の主な資料
今年度も多種多様な新収蔵資料が公開されます。代表的な展示資料としては人文科学系では、歴史分野から19世紀中頃に久米島役人が台湾に漂流して福建省へ送還され、帰国する一連の経緯を記録した『光緒九年八月廿日より 唐江漂着ニ付記』(写真2)や1960~70年代にかけて米軍基地内にて勤務されていた方の表彰状や研修修了証、復帰前後の証明書・記録類、勤務時の写真など総数40点を越える『表彰状等(米軍基地勤務関連)』(写真3)、美術工芸分野からは1832~33年にかけての江戸立ちの際に副使であった尚寛がしたためた書『瑞喜』の扁額(写真4)、民俗分野では表地・裏地・襟地がすべて異なるデザインとなっている『紺地絣柄木綿琉装着物』があります(写真5)。
写真2 『光緒九年八月廿日より 唐江漂着ニ付記』
写真3 『表彰状等(米軍基地勤務関連)』
写真4 『尚寛筆 瑞喜』
写真5 『紺地絣柄木綿琉装着物』
自然科学系では生物分野から最大クラスの大きさとなる『ヒレジャコ貝殻標本』(写真6)、地学分野から約2万年前に絶滅したとされるシカ化石が6個体分以上まとまって久米島の洞穴遺跡から出土した『久米島町下地原洞穴遺跡から出土したリュウキュウジカの化石』が展示予定となっております。
写真6 『ヒレジャコ貝殻標本』
ここで挙げた展示予定の資料はほんの一部であり、各担当学芸員に話を伺うとまだまだ紹介したい新収蔵資料が他にもたくさんあるということでした。それ以外にも寄贈にまつわる様々なエピソードもあるということでした。展示前にはそれらの情報を整理していくことも準備段階の作業になります。
5.意外と知られていない展示解説会
新収蔵品展の展示資料をくまなく見ていくとかなり観覧に時間を要します。要点だけ押さえて観覧されたい方は5月12日の開幕初日に行われる展示解説会へのご参加をお勧めいたします。新収蔵品展開会式が終了した後すぐの10時30分頃に展示会場入り口から各分野別に当館の学芸員が持ち回りで約1時間、新収蔵品展の展示解説を行います。
※過去の学芸員コラムでは企画展の展示解説会についてあれこれ触れておりますので、気になる方は下記URLからアクセスして下さい。
①「埼玉県で実施した企画展『英雄 尚巴志』についての雑感②」
https://
okimu.jp/museum/column/1709893075/
②「エントランス展示『尚巴志王統の系譜』を終えて」
https://
okimu.jp/museum/column/1759823272/
毎年必ず開幕初日に行っている展示解説会ではあるものの、平日での開催であることと事前の告知があまりされていないためか参加される方の大半が寄贈者または博物館関係者となっています(写真7)。ということもあって、残念ながらこの展示解説会は上記関係者限定のイベントであると毎回、多くの方に誤解されてしまうのが悩みのタネになっています。
写真7 昨年度に行われた展示解説会の様子
実際には新収蔵品展の展示解説会は一般観覧者にも広く開かれているイベントに位置付けられています。と言うことで新収蔵品展に興味関心がある方でお時間に余裕がある方は事前受付不要となっておりますので開幕初日かつ開始時間の10時30分に合わせて直接会場へお越し頂ければと思います。 (次回へ続く)
◎おすすめの公開講座
5月博物館学芸員講座
『グスクとは何か―これまでのグスク論とグスクの認識―』
沖縄県内にあるグスクは城跡、集落遺跡、拝所など様々な性格を含み込んだ歴史遺産になります。今回はグスクについての性格付けについてこれまでの研究史を紐解いていきながら、グスクについての多様性とその実態について深掘りしていきます。
①開催日時:2026年5月9日(土)14:00~16:00(13:30から開場)
②講師:山本正昭(沖縄県立博物館・美術館主任学芸員)
③場所:沖縄県立博物館・美術館講堂
④参加定員:200名
⑤参加方法:当日受付・先着順
⑥参加費:無料
主催:沖縄県立博物館・美術館
関連ページURL:http://ttps://okimu.jp/event/1775716645/
主任学芸員 山本正昭