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慶良間諸島の自然の魅力と前島(めーぎぃらま・前慶良間)〜地形・地質に注目して〜

最終更新日:2025.12.26

 沖縄本島南部西海岸から東方に見える多数の島々、慶良間諸島。有人島として最も東にある渡嘉敷島は、那覇市の西、約33kmに位置します。本島南部に住む人にとって、西の水平線近くで何度か目にしたことがある島々かと思います(写真1)。 古くから「きらまーみーゆしが、まちげーみーらん(慶良間は見えてもまつ毛は見えない)」とことわざの中でも語られてきた慶良間諸島。慶良間諸島の見える地域に住む人々にとって大変身近な島々ですが、どのようなイメージをお持ちでしょうか。
糸満市名城から慶良間諸島を望む(2025年9月29日)
写真1.糸満市名城から慶良間諸島を望む(2025年9月29日)

 慶良間諸島を訪れたことがある方なら、きっと現世のサンゴ礁が広がる美しいケラマブルーの海を連想されるに違いありません(写真2,3,4)。美しい海に魅せられ世界中から多くの方が訪れます。私も小学校の修学旅行で訪れて依頼、海水浴、キャンプ、釣り、スノーケリングやサーフィン、ダイビング等、約50年近く様々な形で美しい海にお世話になってきました。 
渡嘉敷村阿波連(2016年10月28日)
写真2.渡嘉敷村阿波連(2016年10月28日)
 
阿嘉島端崎の海岸(2021年3月31日)
写真3.阿嘉島端崎の海岸(2021年3月31日)
 
ケラマブルー(阿嘉大橋から撮影)
写真4.ケラマブルー(阿嘉大橋から撮影)

 しかし慶良間諸島の魅力は海だけではありません。慶良間諸島へ渡る船の中から島々の地形を見ると分かるように、入り組んだ海岸(リアス海岸)には白い砂浜だけでなくダイナミックな海食崖があり、さらにそこから切り立った急峻な地形を観察することが出来ます。
渡嘉敷港南側(緑色岩)  渡嘉敷港東側の城島(緑色岩) 渡嘉敷島クリーンセンター横(砂岩)
写真5.渡嘉敷港南側(緑色岩)  写真6.渡嘉敷港東側の城島(緑色岩)  写真7.渡嘉敷島クリーンセンター横(砂岩)
 
渡嘉敷島阿波連展望台近く(砂岩) 座間味島北部(チシ展望台近く,  砂岩) 座間味島北部(チシ展望台近く,  砂岩)
写真8.渡嘉敷島阿波連展望台近く(砂岩) 写真9.10.座間味島北部(チシ展望台近く,  砂岩)
 
座間味島北東部(緑色岩) 座間味島北東部(緑色岩) 佐久原奇岩群(緑色岩と砂岩) 
写真11.座間味島北東部(緑色岩) 写真12.座間味島北東部(緑色岩) 写真13.佐久原奇岩群(緑色岩と砂岩)

 慶良間諸島の島々は地形学的に、沖縄島北部と同様に高島に分類されますが、ハブが生息する島と生息しない島に分かれるのも面白い特徴です。 またそこには、沖縄本島北部のヤンバルと同様な地質が広がり、貴重な生きものも生息しています。なお阿嘉島等でよく見かけるケラマジカ(天然記念物, 写真14)は、琉球王国時代に人によって持ち込まれた生物です。
ケラマジカ ケラマジカ
写真14.ケラマジカ
 
 こうした様々な表情をもつ島々が集まり多島海を構成しているのも慶良間諸島の大きな魅力の一つです。
慶良間諸島の島々(多島海) 慶良間諸島の島々(多島海)
写真15.

地形や地質学的特徴は、現在の島に至るまでの島の生い立ちを教えてくれます。島を構成する岩石の地質学的特徴や年代、地史については、当館紀要  宇佐美ほか(2023)「慶良間諸島に分布する四万十帯の砂岩の産状および 砕屑性ジルコンの年代測定の試み」に記載しましたのでご覧下さい。 
 
 これまで慶良間諸島の地形や地質の観察会を座間味島、慶留間島、阿嘉島、渡嘉敷島の各島にて当館の催事や、環境省慶良間自然保護官事務所の主催の催事で開催してきました(例えば宇佐美・宮城(2017)「阿嘉島、慶留間島の地質とジオツアー」)。 
 
渡嘉敷島 美花原遊歩道 渡嘉敷島 クリーンセンター前 渡嘉敷島 火立山
写真15.渡嘉敷島での観察会(美花原遊歩道、クリーンセンター前、火立山)
 
座間味島での観察会 慶留間島での観察会 阿嘉島~慶留間島の海上ツアー
写真16.座間味島での観察会  写真17.慶留間島での観察会  写真18.阿嘉島~慶留間島の海上ツアー

 2025年3月と12月には前島ツアーを開催しました。残念ながら天候不良のため現地へ行くことが出来ませんでした。そこで本コラムでは、前島の地形地質と人の生活との関わりの概要についてご紹介します。前島は慶良間諸島の渡嘉敷島の東約12kmに位置します。沖縄本島から慶良間諸島を眺めた場合、最も手前に見える島です。
渡嘉敷島美花原遊歩道から見た前島(写真左側、さらに遠くに沖縄本島が見える)
写真17.渡嘉敷島美花原遊歩道から見た前島(写真左側、さらに遠くに沖縄本島が見える)

 前島は北東から南西に伸びた形をしており、南北方向に約3.1km、東西方向は幅の広い所で0.95km、幅の狭い所で0.47kmと細長く伸びた形をしており、島の周囲は約7㎞です(中村2012)。島の最高点は島の中央の中岳で標高132mあり、他の慶良間諸島の島と同様に島の大きさの割に急峻な地形を成しています。慶良間諸島を構成する主な岩石は、千枚岩、砂岩、緑色岩の3つと、渡嘉敷島の南の一部に分布する石灰岩です。
慶良間諸島を構成する主な岩石3種(砂岩、緑色岩、千枚岩) 
写真18. 慶良間諸島を構成する主な岩石3種(砂岩、緑色岩、千枚岩)
  
渡嘉敷島の南の一部にだけ分布する石灰岩 渡嘉敷島の南の一部にだけ分布する石灰岩 渡嘉敷島の南の一部にだけ分布する石灰岩
写真19. 渡嘉敷島の南の一部にだけ分布する石灰岩

 前島の地質はそのうちの2つ千枚岩を主体に所々に砂岩を挟む様子が各所で観察できます。両者はともに所々分断し変形しており、元となる砂や泥の堆積後、プレート運動によって地下に持ち込まれ大きな力が加わったことを示しています。
前島の地質(千枚岩を主体に砂岩が挟まる)  前島の地質(千枚岩を主体に砂岩が挟まる) 前島の地質(千枚岩を主体に砂岩が挟まる)前島の地質(千枚岩を主体に砂岩が挟まる) 
写真20.前島の地質(千枚岩を主体に砂岩が挟まる)

 前島は人が生活するのに適した低地は僅かしかありません。集落跡は僅かな低地の中で地形的に水が得やすくかつ北風を遮ることが出来る島の東側中央にあります。集落内の石積みやお墓の石材の多くは、島の周りから採取されたと推測されるサンゴの骨格が使用されています。他の慶良間諸島の島々と同様に、島を構成する岩石を切り出し使用するより、豊富に存在するサンゴを利用した方が効率的だったことが考えられます。 
前島の集落内の石積み(お墓) 前島の集落内の石積み 前島の集落内の石積み
写真21.前島の集落内の石積み

 前島には、慶良間諸島の島との共通点も数多くありますが、一方で前島にしかない魅力も多数あります。集落跡は、前島の人々が、島の自然とともに共生し生活してきた面影を残す貴重な文化遺産です。後世まで大切に引き継がれることを願います。
 集落跡の様子は、私と一緒にツアーガイドを務める予定であった山本学芸員執筆のコラムに記載されますのでぜひご覧下さい。 

謝辞
 前島ツアーに申込をされた皆様、また講演会に参加下さいました皆様、現地に行くことが出来なかったのは大変残念でしたが、ありがとうございました。また機会があればご参加いただけましたら幸いです。 なお前島ツアー開催にあたっては、かつて前島の住民であった中村文雄氏に多くの情報と助言をいただきました。ここに感謝の意を表します。
講演会の様子 講演会の様子
写真22 講演会の様子

※ 本コラムに記載したとおり、慶良間諸島には貴重な自然環境が存在しているため、国立公園に指定され保護されています。

参考文献・引用文献
中村(2012)語り継ぐ めーぎぃらま 渡嘉敷村字前島
宇佐美・宮城(2017)阿嘉島、慶留間島の地質とジオツアー
宇佐美ほか(2023)慶良間諸島に分布する四万十帯の砂岩の産状および 砕屑性ジルコンの年代測定の試み
博物館班長 宇佐美賢

















 

博物館班長 宇佐美賢

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