1. エントランス展示『尚巴志王統の系譜』を終えて

エントランス展示『尚巴志王統の系譜』を終えて

最終更新日:2025.10.07

  はじめに

    令和7年9月28日に閉幕した博物館エントランス展示『尚巴志王統の系譜』ですが、多くの方々のご協力により、特に大きなトラブルもなく終えることができました。この展示期間中に関連講座やワークショップ、そして展示解説会といったイベントを行いました。
 今回はそれらを実施した内容について簡単に触れていきたいと思います。

1.盛り上がったワークショップ

 今回は第一尚氏王統の第6代国王である尚泰久王により鋳造された「大世通宝」のレプリカを合金で製作するワークショップを9月7日に行いました。午前と午後共に10名以上の参加者があり、参加された皆さんが上手く完成まで仕上げたこともあり、大いに盛り上がりました(写真1)。

写真1 ワークショップでの様子

 「大世通宝」とは第一尚氏で初めて鋳造された銅銭で、中国・明朝の銅銭「永楽通宝」を基に作られています。永楽通宝の永楽とは明朝の第3代皇帝である永楽帝のことを示しています。大世通宝にも王の名が記されています。それは尚泰久王の神名が「大世主」であったことにちなみ、「大世」の文字が銅銭に刻まれています。神名とは王に即位した際に、神女が神がかりをして天の神から授かった名前とされています。
 この王の名を刻む銅銭のレプリカは今回、参加された方々にとって良い思い出のレプリカになったと思います(写真2)。

写真2 作製した大世通宝のレプリカ

2.学芸員講座で圧倒される

 9月の学芸員講座はこの展示と関連して「王権の痕跡―第一尚氏ゆかりの遺跡を辿る―」と題して9月13日に実施しました(写真3)。この学芸員講座には200名を超える参加者があり、会場に入ることができない方も多数、いらっしゃいました。

写真3 9月学芸員講座の様子

 会場の席数を超えるほどの人が集まったことで、第一尚氏王統についての興味を持っている方が想像以上におられることを肌で感じることができました。更に最後の質疑も多く賜ったことからも、第一尚氏王統に対する熱量も非常に高いことを実感しました。どこまで第一尚氏王統について理解していただいたのかはそれぞれの参加者の胸の内にあると思いますが、少なくとも参加された皆様の反応から学芸員講座で第一尚氏を題材にしたことの意義を否応なく感じることができました。

3.定員をはるかに超えた展示解説会

 今回のイベントの中で最も困惑したのが9月28日に開催した展示解説会になります。9月6日にも展示解説会を行っており、その時は参加定員内でほぼ収まっていました。
 今回も前回と同様に午前と午後に分けて2回実施しましたが、展示最終日と言うこともあってか何れも15名の定員枠を大きく超える方々が集まりました。午前、午後共に開始時間の15分前には20名を超える方々が会場で待っていたことから、10分ほど開始予定時間を早めて展示解説を始めました。最終的にはおそらく定員の倍以上の方が展示解説会に参加されたものと思われ、その対応にスタッフの皆様含めてかなり気をもみました(写真4)。

写真4 展示解説会の様子

 そして、展示解説会の最後に質疑応答を受けたのですが1時間近くも参加者からの質疑応答が続いたことから、学芸員講座の時と同様に第一尚氏王統に対する興味、関心が高いことを今更ではありますが強く感じました(写真5)。また、参加者からは次回も第一尚氏王統に関連する展示をしてほしいや、展示会の会期をもう少し長くやって欲しいといった要望を頂きました。このように多くの遣り取りがあったことで、展示会とそれに関連する催事の苦労が報われた気がしました。

写真5 展示解説会での質疑応答の様子

4.展示の後に残ったもの

 展示最終日の次の日には撤収作業を沖縄県立博物館友の会の皆様と一緒に行い、その日のうちに撤収作業は完了しました(写真6)。展示期間は1か月弱と短期間ではありましたが、とても濃密な時間を過ごすことができたように思いました。それは筆者だけではなく、展示に携わった方々も感じているかと思います。というのは学芸員講座、そして展示解説会での熱気は従来までのそれとは比較にならないほど高かったことは誰もが感じていたからです。それを体感したことで今回の展示会の印象が心に深く刻まれ、確かな記憶として残っていくものと思われます。
 
写真6 展示撤収作業の様子

 9月末で展示は終了しましたが、第一尚氏王統に関係する講座が今年の12月と来年の1月に行われるのでまた次に向けて頑張っていきたいと思います。
                                (主任学芸員 山本正昭)

◎9月学芸員講座の動画を公開

 ここで紹介しました9月学芸員講座「王権の痕跡―第一尚氏ゆかりの遺跡を辿る―」の動画が『おきみゅーちゃんねる』にて公開されています。ご興味のある方、もしくは諸事情で当講座に参加できなかった方は以下からぜひご覧ください。

◎おすすめの講座情報

 沖縄県立博物館友の会が主催する第一尚氏王統についての講座が12月18日に行われます。詳細につきましては以下の通りとなりますので、第一尚氏王統または『おもろさうし』にご興味ある方はぜひご参加ください。
①テーマ:「おもろの中の第一尚氏」
②講師:島村幸一(立正大学名誉教授)
③日時:2025年12月14日(日)
④場所:沖縄県立博物館・美術館講堂
⑤参加方法:当日受付(先着200名)
⑥参加費:無料
⑦お問い合わせ:098-868-2722 沖縄県立博物館友の会事務局

主催:沖縄県立博物館友の会  共催:沖縄県立博物館・美術館、沖縄美ら島財団
後援:沖縄県文化振興協会
















 

主任学芸員 山本正昭

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