1. エントランス展示、遂に始まる ―『尚巴志王統の系譜』の展示裏話―

エントランス展示、遂に始まる ―『尚巴志王統の系譜』の展示裏話―

最終更新日:2025.09.10

  令和7年9月3日から当館のエントランスにて尚王統成立600年を記念して『尚巴志王統の系譜』が始まりました(写真1)。展示規模としてはそれほど大きくありませんが、多くの方に支えられた展示会ですので、皆さんが興味を持っていただけるよう、ここでは展示前の裏話を披露したいと思います。

写真1 『尚巴志王統の系譜』展示の全体風景

1.本展示のねらい

  今回の展示は沖縄県立博物館美術館・美術館は主催ではなく共催になります。主催は当館を様々な面でサポートすることを活動主旨としている沖縄県立博物館友の会になります。この会は200名を超える会員で構成されており、その中には歴史に興味を持っている方も多くいらっしゃいます。
 今回の展示はそのような会員の方々に対する学びの機会を提供すると共に、展示を通して会員相互と会員と来館者との親睦を図っていくのが目的です。また、沖縄県立博物館美術館・美術館と協力しながら沖縄県立博物館友の会の存在を来館者に対して知っていただくことも本展示会のねらいであります。

2.展示の構成

   展示会を実施するにあたってはどのようなテーマで、どのような内容であるのかを事前にしっかり練らなければなりません。冒頭で示しましたが2025年は尚王統が成立して600年という節目の年であることから、第一尚氏王統の歴史をテーマにした展示を実施することに決めました。それに合わせて以下の4つの章立てに沿って、展示をまとめていくことにしました。
 
  はじめに
  第1章 歴代の国王たち
  第2章 第一尚氏王統ゆかりの地10選
  第3章 征討と内乱の時代
  第4章 第一尚氏王統の最期―おわりにかえて―
 
 展示資料についても第一尚氏王統に関係の深い資料を展示しており、より身近に感じ取ることができる内容となっております。
  実は当館が所蔵する第一尚氏王統に関係する資料はかなり限られていることが頭をもたげる大きな課題としてありました。そのハードルを越えるためには展示計画の当初から他の機関の協力を得ることが必須であると考えていました。

3.第一尚氏にまつわる展示物を借用

   沖縄県内で行われる発掘調査で沖縄県が主体となって発掘した遺跡出土の遺物は西原町にある沖縄県立埋蔵文化財センターにて保管されています。過去に発掘調査された首里城跡や首里周辺にある遺跡から出土した大量の遺物も同センターで保管されていることから、30点ほど展示資料としてこれらの資料の中から選んで借用することに決めました。
 まずは首里城跡出土遺物の展示を考えましたがその量が膨大であり、現状の展示スペースでは足りなくなることから断念しました。そして、過去にあまり展示されていない遺跡の出土遺物であれば、観覧する側にも新鮮味があるということで天界寺跡と綾門大道跡の出土遺物を借用し、展示することにしました(写真2)。

写真2 展示資料陳列作業

4.限られた展示設置の時間

   展示を設置できる日は展示開始前日の1日だけになります。それはエントランスに人が入らない休館日になります。この限られた時間で効率良く展示の準備を行わなければなりません。

写真3 展示パネル設置作業

 沖縄県立博物館友の会からは7名の会員が展示物設置に参加されたこともあって、かなり手際よく設置作業が進みました(写真3)。展示の作業が佳境に入る頃には会員の方々にも展示へのこだわりが湧き出てきたようで、パネルの傾きやそれぞれのパネルの位置に対する注文が会員間で飛び交うようになっていきました。
 そして、当日の夕方には設置作業が無事に完了して(写真4)、9月2日朝に展示初日を迎えるに至りました(写真5)。


写真4 設置完了直後


写真5 展示初日の観覧者

5.ウークイに展示解説会

   展示が始まって初めてのイベントである展示解説会を9月6日に開催しました。午前中は17名、午後は11名の方々が参加していただきました。この日は旧盆のウークイに当たることから、あまり人は集まらないと予想していましたが、その予想に反して総計28名もの方が集まりました(写真6)。


写真6 展示解説会の様子

 改めて第一尚氏に対して興味を持っている方が多くいらっしゃることを直に感じることができました。また、気が早いですが次回の第一尚氏に関係する展示はいつ行うのかといった質問まで頂いたことから、何かまた別の切り口で第一尚氏について展示で取り上げていかないといけないとも感じました。
 様々な方から展示の感想も頂いたので、より良い展示を目指していく上でも大変参考になりました。また、機会がありましたらこのような展示を行っていきたいと思います。
 最後ではありますが沖縄県立博物館友の会会員の皆様にも展示解説会ではスタッフとして手伝っていただき、この場を借りてお礼申し上げます。
 

○イベント情報 エントランス展示『尚巴志王統の系譜』第2回展示解説会

 今回のコラムで取り上げました展示解説会を以下の日程で再び行います。旧盆で都合がつかなかった方々はこの機会にぜひご参加ください。なお、参加方法は当日受付けで、参加費は無料になります。

①日時:令和7年9月28日(日) 午前の部 10:00~11:00 午後の部14:00~15:00 
②参加費:無料
③解説員:山本正昭(当館学芸員)
④参加定員:15名
⑤参加方法:開催日に当館エントランスにて展示解説会開始前に受付。


 

主任学芸員 山本正昭

シェアしてみゅー

TOP