沖縄県は県土の約3割を石灰岩に覆われており、638箇所以上の洞穴が知られています(沖縄県教育委員会1980)。石灰岩層中に形成された洞穴(鍾乳洞)や裂罅(れっか:フィッシャー)の堆積物中からは、絶滅種や現生種を含む保存の良い動物化石が多産します。
沖縄県内では、これまでに93カ所以上の絶滅シカ類(リュウキュウジカ・リュウキュウムカシキョンなど)を主体とする更新世脊椎動物化石産地が知られており(大城・野原1977)、このうち10カ所ほどから旧石器(更新世)人骨あるいはその可能性のある人骨が発見されています(沖縄県立博物館・美術館2016)。
現在までに知られている沖縄県内の旧石器時代遺跡はすべて洞穴遺跡で、なおかつ人骨を伴っている点で、日本の中でもユニークな地域となっています。沖縄県立博物館・美術館では、新たな旧石器人骨の発見をめざして、県内各地で継続的な調査を実施しています。
こうした調査研究の一環として、去る7月上旬に、新たな遺跡や人骨等の遺物の確認を目的として、石垣島の洞穴調査を行いました。今回は、その概要についてご紹介します。
【文献】
大城逸朗・野原朝秀 1977「琉球列島における鹿化石産出地について」『沖縄県立博物館紀要』第3号
沖縄県教育委員会 1980『沖縄県洞穴実態調査報告Ⅲ』沖縄県天然記念物調査シリーズ第19集
沖縄県立博物館・美術館 2016『博物館特別展図録 港川人の時代とその後-琉球弧をめぐる人類史の起源と展開-』

石垣島といえば730(ななさんまる)記念碑。
1978年7月30日に自動車が右側通行から左側通行に変更された記念として建てられました。

石垣島の北西部、牧草地の奥にある洞穴をめざします。

こんな感じのジャングルが続きます。ヘビに注意!

いい感じの洞穴にたどりつきました。何かあるでしょうか。

内部はこんな感じ。けっこう広いです。
(写真左下に人がいます)

洞内の各所に骨や貝殻が散らばっています。
昔の人が生活した痕跡でしょうか・・・

調査初日の夜はフェスティバルがあり、
石垣港から大きな花火があがっていました。

翌朝。あいにくの曇り空ですが、名蔵アンパルの干潟と
マングローブ林の風景です。

2日目の朝は雨が降ったので、
セマルハコガメがお散歩していました。

お昼ごはんの牛そば。安くておいしかったです!

石垣島の東海岸にある洞穴。洞口から小川が流れ出しています。

大きなシャコガイのかけらが落ちていました。

洞穴の内部には海浜性の砂礫が流れ込んでいました。
石垣島では明和津波(1771年)や先島津波(約2000年前)など、
幾度かの津波の襲来が知られており、そうした津波によって
洞内に流入したものと考えられます。

この洞穴は石灰岩層と基盤層の不整合付近に形成されており、
天井には琉球石灰岩とは異なる基盤由来の異質な巨礫
(古期石灰岩の礫)が所々に見られます。

もうひとつ別の洞穴を探検します。
入り口は大きな陥没ドリーネになっています。

内部は大きなホールになっていました。
洞床にはやはり海浜性の砂礫が堆積しています。
津波によるものでしょうか。

所々に動物の骨(おそらくウシ)が散らばっていました。
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【フィールドワーク】石垣島の洞穴調査-その2-に続く
主任学芸員 山崎真治