1. 与論島で行った2つの与論グスク関連イベント

与論島で行った2つの与論グスク関連イベント

最終更新日:2025.01.14

  鹿児島県与論町にある与論グスク、正式名称は「与論城跡」が国指定史跡に答申された記事が令和6年12月21日に全国紙で報じられました。沖縄県内主要2紙もその日に紙面を大きく割いて取り上げていました。
 以前の当コラムにて当館所蔵の与論グスクのジオラマ模型を与論町のサザンクロスセンターに展示していることもあって、より注目が集まるようになりました。
今回は与論グスクが史跡に指定されたことに合わせて12月に与論グスクにおいてジオラマ模型解説会と現地解説会の模様について触れていきたいと思います。

1.大盛況、与論グスクジオラマ模型解説会

 与論グスクジオラマ模型の概要については過去の学芸員コラムを見ていただければその詳細が分かるので、以下にURLを張り付けておきます。
 
グスク模型の魅力と活用(上)
https://okimu.jp/museum/column/1729062351/
グスク模型の魅力と活用(下)
https://okimu.jp/museum/column/1729130415/

 与論グスクのすぐ隣にあるサザンクロスセンターは与論島唯一の展示観光施設で、その最上階において令和6年3月末まで展示を行っています。最上階の展示スペースの一角で今回は展示解説会を行いました(写真1)。

写真1 サザンクロスセンターでの与論グスクジオラマ模型展示状況

 参加者は32名と想像していた数よりも多く集まったため、かなり混雑した中で1時間ほど与論グスクジオラマ模型の見どころを解説させていただきました(写真2)。そして、最後に質疑応答の時間を30分ほど設けましたが、こちらも非常の多くの方が質問を投げていただいたために、予定時間を大幅に超えてしまいました。沖縄本島から来られた方も数名いらっしゃいましたが、参加者の大半は与論町民であったことから与論グスクに対する愛着を肌で感じることができました。なぜ、与論グスクをこの場所に築いたのか、琉球王国山北との関係について、更に縄張りについての特徴など、様々な質問を賜りました。

写真2 与論グスクジオラマ模型展示解説会の様子
 

  • 2.与論グスクの現地見学会は無事に成功するのか

 ジオラマ模型の解説会で参加者の熱に押されてしまいましたが、何とか無事に終了することができました。しかし安心するのも束の間で、次の日は朝9時から与論グスクの現地解説会が始まるため、事前に見学ルートや時間配分の確認が必要となります(写真3)。入念な準備をしても当日はどれだけ参加者が集まるのか、当日の天候はどうなるのか、不安は尽きることがありません。

写真3 現地での事前足場確認

 そして当日の現地見学会では与論町教育委員会の文化財担当者である南勇輔さんが過去の発掘調査成果についての現地での解説を行い、グスクの縄張り解説についてはこちらで行うことに役割分担を決めて臨むことになりました。
 参加者は当初、20名を想定していたのですが、予想外の35名も集まったため急遽、山本と南の2グループに分けてそれぞれで現地解説を行いました。約2時間かけて与論グスクの隅から隅まで歩き解説をしたのですが、前日までに与論町教育委員会が見学箇所と見学ルートの下草払いを行っていたことから、与論グスクの石積みや平場などが見やすくなっていました(写真4)。与論グスクの面積は約3万㎡であることから、かなり時間をかけて下草を刈っていただいたことを想像し、そのご厚意に感謝しながら各場所を歩き、解説を進めていきました(写真5)。


写真4 下草が除去された主郭へ至る城道(上写真)
    下草が除去されたグスクの石積み(下写真)


写真5 現地見学会の様子   
 

3.島民にとっての与論グスクへの思いとは

 天候に恵まれたこともあって現地解説会はスムーズに進めることができました。それぞれの見学地点で参加者からの質問を受け、可能な範囲でその場で解説を行いました。また、参加者の中にはご高齢の方もいらっしゃったので上り下りに注意を払いながら、各所を丁寧に見て回りました(写真6)。

写真6 与論町教育委員会の南専門員による現地解説

 因みに与論町教育委員会の教育長もこの現地解説会に参加されており、この現地解説会のあいさつにて与論グスクに対する熱い思いを語っていただきました(写真7)。

写真7 与論町教育委員会の中山義和教育長による挨拶

 与論島には縁もゆかりもない筆者ですが、イベントを行ったこの2日間で島民が一丸となって与論グスクに対する期待と情熱を寄せていることを十分に感じ取ることができたと共に、この島の人達がいかに島の歴史を大事にしてきたのかを改めて知ることができました。島民にとって文化財はその地のアイデンティティを育んでいく場所であることを今更ながら実感しました。
 

4.与論グスクジオラマ模型の解説会と現地解説会を終えて

  •  これまでに何度も与論島を訪れていましたが、今回ばかりは島を後にするのはとても名残惜しく感じました。その理由はこの2日間で島民の方々から「与論グスクにより興味が湧いた」や「島の歴史についてもっと知りたくなった」といった感想や「また、今回のような催し物をやってほしい」や「他の遺跡にも案内してほしい」といったご要望を直接、賜ったことに他なりません。
     また、近いうちに与論島を訪れることになると思いますが、おそらく他の離島とは異なる特別な思いを抱いて令和7年以降は与論島へ向かうことになるでしょう。
        
     写真8 与論島全景 
                                
                                              (主任学芸員 山本正昭)

 


                                      

 

主任学芸員 山本正昭

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