1. 倭寇について考える⑬―宮古島市歴史文化資料館での展示を終えて―

倭寇について考える⑬―宮古島市歴史文化資料館での展示を終えて―

最終更新日:2024.12.02

  (前回から続く)
 宮古島市歴史文化資料館にて企画展『琉球と倭寇のもの語りin宮古島』が去る11月17日をもって無事に閉幕しました(写真1)。開幕前後の顛末については以前の学芸員コラムで紹介させていただきましたので、以下にURLを示しておきます。
 
倭寇について考える⑫―企画展『琉球と倭寇のもの語りin宮古島』から見えること―
https://okimu.jp/museum/column/1727851619/
 
今回はこの展示の最終日に展示解説会を行いましたので、その様子と感想について触れていきたいと思います。



写真1 企画展『琉球と倭寇のもの語りin宮古島』展示風景
 

1.最終日に展示解説会、その意図とは…

 この展示の解説会は実は9月29日にも行いました。が、その時は講座の後にオマケとして行ったため、ピンポイントでの展示解説でした。企画展全体を通しての展示解説会を宮古島でも行いたいと思っていたところ、宮古島市教育委員会のご協力を賜ったことから展示最終日に開催することができました(写真2)。
 展示解説会を最終日に設定した意図は、展示内容に疑問や興味を抱いた観覧者の方々に対して、最終日に一括してそれらを解消したいということ、そして、観覧を迷っている方に対して解説会という観覧の切っ掛けを提供できるという2点にありました。
 
写真2 展示解説会の様子 
  

  • 2.宮古島ならではの質問

 展示解説会開催当日には10名の参加者が集まり、約90分にわたって展示解説を行いました。展示解説会の参加者が全て女性であったことは大変驚きました。というのは以前に当館にて行った展示解説会の7~8割が男性であったことから、女性の参加者は少ないものと見積もっていました。このことが影響してか分かりませんが、少し緊張気味の出だしとなってしまいました。しかし、次第に力が入った解説になっていったことから、気が付けば予定していた90分を越えていました。それでも参加者は誰1人脱落することなく、最後まで熱心の自身の解説に耳を傾けていらっしゃいました(写真3)。


写真3 熱心に解説に耳を傾ける参加者

 最後の質疑応答では多くの質問を賜りましたが、展示ならびに解説した内容をよく理解した上での質疑だったので、こちらもとても有意義な時間になりました。
 伊良部島出身の方は宮古諸島と当時の東アジア世界がどのような関係性を持っていたのか、ということに興味関心を寄せていたようで倭寇との関連で宮古島が置かれた当時の状況についてのご質問を賜りました。倭寇とされている人々の中には海を越えて、つまり地域をまたにかけて活動していた人々が存在したことを絡めて質問に答えさせていただきました。
このやり取りは宮古島ならではの質問であると、解説会終了後に感じ取りました。 
 

3.王国か、地域・島か

 その理由としては、歴史的に見ると宮古諸島は琉球王国に取り込まれた地域であり、これまでに宮古諸島において国家が誕生していないことから、あくまで島に住まう人々を主体として歴史を読み取っていく認識が強く存在しているように思ったからです。また、質問の中でも琉球王国に関わる内容がほとんど無かったことも、琉球王国と宮古諸島とを重ねながら見ていないように感じました。これはあくまで今回の展示解説会に限った感想なので、宮古島に住む人々が全てそのように捉えているかは分かりませんが、少なくとも沖縄本島で行った展示解説会の質疑応答とは異なるニュアンスを読み取ることができました。
 過去に向き合う姿勢は国家が形成された地域とされなかった地域とで見ている角度が異なるように感じた今回の経験は、今後、第三者に歴史を説明する上では大きな学びとなりました。 
 

4.展示の後片付けをしながら

  •  『琉球と倭寇のもの語りin宮古島』が終了した次の日には宮古島市教育委員会の皆さんと共に撤収作業を行い、その日のうちに会場は展示前の風景に戻りました(写真4)。

    写真4 展示撤収後の展示室

     これまで令和5年9月に当館で、そして令和6年2月に阿嘉島で会場を巡回してきた企画展『琉球と倭寇のもの語り』は遂に宮古島にてフィナーレを迎えることになり、最後に頭の中に様々な思い出が甦ってきました。多くの方がこの企画展観覧のために会場へ足を運んでいただいたことそして、各会場ではスタッフの方々の協力を得て開催に漕ぎ付けたこと、様々の方々に感謝しながら宮古島市歴史資料館での撤収作業を行っていました(写真5)。
     いろいろと不備な点もあった今回の企画展でしたが、これらの反省点を活かしてまた次の企画展に向けて頑張っていきたいと思います。

    写真5 展示撤収作業の様子

    次回へ続く                                      
                                              (主任学芸員 山本正昭)

〇フィールドツアー(現地解説会)の開催情報


 令和7年2月9日(日)に南城市佐敷津波古集落の史跡をめぐる現地解説会を開きたいと思います。今帰仁を拠点にしていた王国・北山の王子が、国家滅亡後に移り住んだとされる津波古集落には沖縄本島南部には珍しく北山に所縁のある史跡を見ることができます。今回は半日かけてそれらの史跡を巡り歩くフィールドツアーになります。
以下、詳細になります。

  • 日時:令和7年2月9日(日)午後1時30分~4時
  • 講師:山本正昭(当館主任学芸員)
  • 見学場所:津波古土帝君、喜屋武久殿、多和田井・殿、加那堂井、外間殿ほか
  • 参加定員:20名(先着順)
  • 申し込み方法:事前申し込み(098-948-1513 玉城青少年の家)※1月23日(木)から受付開始

                                     

 

主任学芸員 山本正昭

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