最終更新日:2024.10.16
現在、当館の常設展示室には知念グスク、座喜味グスク、浦上有盛遺跡のジオラマ模型が展示されています(写真1)。それらは琉球列島各地にある城郭遺跡の全容を知るために製作された模型になりますが、これらとは別に普段公開されていない与論グスクのジオラマ模型を当館では所蔵しています。今回はこの模型について紹介していくと共に、製作された当時について触れていきたいと思います。
写真1 常設展示室のジオラマ模型
与論グスクジオラマ模型は令和元年度に実施された当館特別展『グスク・ぐすく・城』(写真2)の開催に向けて製作された模型で、観覧者に対してグスクの実態を俯瞰して知ってもらう目的で約半年間の製作期間で作り上げたものになります。製作に当たっては与論グスクが所在する与論町役場からの全面協力と模型製作に向けて意見を十分に反映していただいた製作会社の努力が無ければ実現できませんでした。
写真2 令和元年度に実施した特別展『グスク・ぐすく・城』
とくに与論町教育委員会から過去における与論グスクの調査データの提供していただいたことや製作に当たっての現地調査に同教育委員会の専門員が何度も同行していただきました(写真3)。おかげ様で、質の高いジオラマ模型が完成するに至りました。
写真3 与論グスクでの調査
与論グスクのジオラマ模型は1/700スケールで製作しました(写真4)。その理由は、グスクの全体構造と出入口の形、石積みの屈曲が具体的に分かるスケールであることと、沖縄県内の博物館にあるグスクの模型の多くが1/700スケールで製作していることから、他のグスク模型と比較できることを考慮に入れたことにあります。
写真4 与論グスクジオラマ模型(1/700スケール)
寸法については高さ8cm×幅75cm×奥行75cmとなっており、与論グスクの主体部だけではなく周辺に立地している城集落やグスクが占地している丘陵の麓にある井戸までをジオラマ模型の範囲として含めています(写真5)。そこにはどのような場所にグスクがあり、そしてグスクを支えた人々との関係性がどのようなものであったかを示したいという思惑があります。そうすることで与論グスクの魅力がより一層、ビジュアル的に引き立てることになります。
写真5 与論グスクの南側にある井戸「神川」のジオラマ再現
また、このジオラマ模型は将来的に他の博物館でも活用できるように、移動するために必須となる収納箱も合わせて製作しました。この収納箱は木製で長時間の輸送にジオラマ模型に負担がかからないように緩衝材などの数量と配置を考えて、製作されています(写真6)。
写真6 収納箱に入った与論グスクジオラマ模型
特別展『グスク・ぐすく・城』の開催期間は約2か月間で、この模型も展示が終了してからは収蔵庫に収められることになりました。しかし、令和2年度に開催された国立歴史民俗博物館主催の展示会『海の帝国琉球』や令和5年度に開催された兵庫県立歴史博物館主催の展示会『首里城と琉球王国』といった沖縄県外にある博物館の企画展の展示資料として貸し出し、そして公開されたことから順当に活用されているように思われます(写真7)。また意外ではありますが、貸し出しを前提としたグスクのジオラマ模型が他に無かったことが、県外の博物館から立て続けにこのジオラマ模型の借用を希望することになったものと想像されます。
写真7 『海の帝国琉球』に展示中の与論グスクジオラマ模型
因みに屋良座森グスク、三重グスク、仲三重グスク、御物グスク、硫黄グスクを入れた那覇湊周辺のジオラマ模型(写真8)も当館で製作しており、こちらも国立歴史民俗博物館や那覇市歴史博物館、護佐丸歴史民俗資料図書館へ貸し出し、展示を行った実績があります。
このような活用実績が積みあがっていく中でついに今年度、与論町教育委員会から与論グスクジオラマ模型の借用依頼が当館にありました。
写真8 那覇湊周辺のジオラマ模型
(次回へ続く)
(主任学芸員 山本 正昭)
Part1 与論城跡復元模型オープン説明会
日時:令和6年12月14日(土) 15:30~17:00
場所:サザンクロスセンター2階
参加方法:当日受付(予約不要、先着順)
参加費:無料 ※サザンクロスセンターへの入館料が必要
Part2 与論城跡史跡巡り(現地見学会)
日時:令和6年12月15日(日) 9:00~11:00
場所:与論城跡駐車場付近
参加方法:当日受付(予約不要、先着順)
参加費:無料
その他:歩きやすい服装でご参加ください。
※問い合わせ先:0997-97-2441(与論町教育委員会生涯学習課)
主任学芸員 山本正昭