最終更新日:2024.09.12
(前回からの続き)
去る令和6年9月7日に当館主催の学芸員講座にて『石積みを持つグスクの特徴』と題してお話をさせていただきました(写真1)。130名もの方々が会場へご参集していただき、そして90分という長丁場ではありましたが中座される方も殆どいらっしゃらなかったことから、かなり熱心に耳を傾けていただいたように感じました。改めて参加された方々ならびに当日の対応に当たっていただいたスタッフの皆様にはこの場を借りて厚く御礼を申し上げます。
写真1 今回の博物館学芸員講座の様子
今回も舌足らずな内容ではありましたが、近年にて色々調べたグスクの加工石材に関する成果を披歴させていただきました。この中で分かったこと、そして分からなかったことについてある程度、整理して伝えたつもりでしたが、最後の質疑応答においてはこちらが想定していた以上の数のご質問を賜りました(写真2)。それらの中でも石積みを築くことに長けた専門集団が沖縄にも存在したのか、加工石材から沖縄独自の美意識を見て取ることができるのか、石材を加工する石工具が金属製ということであれば、いつ頃に沖縄では金属が使用されるようになったのか、といった質問は今回の講座の本質を突くような鋭い質問がありました。
写真2 学芸員講座にて石積みについての解説
このような質問に対しては分かっている範囲で答えさせていただいたのですが、参加者の方々にとってこれらの質疑を含めて今回の講座は聞き応えがあったかと思います。
講座後の質疑応答も含めて学芸員講座の醍醐味であることを今更ながら気が付かされました。
今回の講座でのテーマがいかに多くの方々にとって興味があるのかは、先の質問内容から容易に推測することができました。おそらくグスクに対して並々ならぬ熱意を持っている方、そしてグスクに対する新たな知見を得ようとする方などが参集されたものと思われます。
ただ、こちらの正直な感覚として今回のような座学ではなく、実際にグスクに足を運んで見ることが一番の知見となることはかなり以前から思っておりました(写真3)。というのは過去に各地のグスクを現地案内したことがありますが、現場で知るインパクトは何物にも代えがたい経験となっていることを参加された方々から感じ取ることができたからです。いつか機会があれば実際にグスクを皆さんとまた、一緒に訪ね歩きたいと考えております(写真4)。
写真3 過去に実施した現地見学の様子(船越グスクにて)
写真4 令和5年2月に実施した首里城周辺の史跡巡り
実のところ今年の年末辺りに、とある離島にあるグスクをじっくり見て回るフィールドツアーを密かに計画しております。仮に実施するはこびとなりましたら、この学芸員コラムにてお知らせしたいと思っておりますので、今後もご注視をお願いいたします。
講座終了後にはアンケートを参加者の方々に記入していただいたのですが、並々ならぬ思いで今回の講座に参加された方がいらっしゃったことを知りました。遠く今帰仁村から参加された方や沖縄県外からも4名の方が参加されていました。
アンケートの自由記入欄にはかなりマニアックな石積みグスクを現地にて訪ね歩いたという方や近所にあるグスクについて興味を持っている方、更には石材の加工方法の原点について知りたいといった方など、様々な視点からグスクの石積みに興味を持っていることを知りました。
そこまで人々を魅了するグスクの石積みとは何なのか。その答えについてはこれから時間をかけて紐解いていかなければならないと共に、新たに分かった研究の成果があればこれからも広く伝えていくことを心がけようと強く思いました。
このテーマでの学芸員コラムは今回で終了としますが、またの機会があれば個別に本コラムの中で報告したいと思います。
主任学芸員 山本正昭