毎年5月10日から16日までの1週間は「愛鳥週間(バードウィーク)」となっており、日本鳥類保護連盟の呼びかけのもと、愛鳥思想の普及を目的に各地で関連行事が開催されます(
)。当館には700点近い鳥類剥製が収蔵されていますが、展示で活用する場面はそう多くありません。だから「愛鳥週間」は、剥製の鳥たちが活躍できる数少ないチャンスなのです。
当館では、毎年エントランスホールにて「愛鳥週間」ミニ展示を実施してきましたが、ただ剥製を展示するだけでは能が無いので、手を変え品を変え、趣向を凝らし、来館者の皆様に楽しんでいただけるよう工夫してきました。自分の中で決めたハードルは「マンネリ化」を回避すること。「観る人は違うから毎年同じでもいいのでは?」という考えもありますが、そこはあえてこだわってきました。以下に私(菊川)が赴任した2018年度からこれまでに実施したミニ展示を紹介します。
〇2018年度『くちばし総選挙』
展示された剥製について、「くちばし」の特徴や使い方を説明するパネルを設置。気に入った「くちばし」をもつ鳥に投票できるようにしました。約500名の来館者が投票してくださり、優勝したのはリュウキュウアカショウビンでした。
〇2019年度『大鳥類展!~博物館で鳥三昧~』
当館所蔵の鳥の剥製を所狭しと並べて展示しました。観覧した皆様には、鳥類の多様性を実感していただけたと思います。
(2020年度と2021年度は、コロナウィルス感染拡大のため自粛)
〇2022年度『鳥たちの歌声を聴いてみよう!~鳥の美声コンテスト~』
お手製の鳥の“鳴き声再生装置”を剥製の前に設置、スイッチを押して鳴き声を聞いけるようにしました。そして気に入った鳴き声の鳥に投票できるようにしました。優勝したのは、くちばし総選挙に引き続き、リュウキュウアカショウビンでした(2連覇達成)。
〇2023年度『めざせ!鳴き声ハカセ~鳥の鳴き声クイズ~』
鳴き声再生装置(2022年度に開発したもの)を用いて、鳴き声を聞いてその主をあてる「クイズ形式」の展示としました。観覧者の皆様は、鳥たちの以外な鳴き声に苦戦していたようでした。
そして2024年度は? そうだ、館外進出だ!
今年度(2024年度)は、昨年度末に北海道の植田氏より寄贈を受けたカムイサウルスがエントランスホールに展示されてており(
https://www.facebook.com/share/p/nrTzpjujMLuGznj8/?mibextid=WC7FNe)、いつもの「愛鳥週間」ミニ展示を開催するスペースがありませんでした。鳥類は恐竜の生き残りでもありますし、今年の「愛鳥週間」ミニ展示はあきらめよう、という考えもよぎりました。しかし、せっかくこれまで続けてきた取り組みなので、今年度も実施したい、ということで前々から検討していた館外での展示にチャレンジすることを決意しました。
〇沖縄県立南部医療センター・こども医療センター
館外進出の狙いは、博物館に来たくても来れない方々に博物館の展示物を見ていただくこと。その目的にぴったりの場所を2ヶ所を探し出しました。1ヶ所目は、沖縄県立南部医療センター・こども医療センター(南風原町新川)です。「愛鳥週間」の期間には合わせられませんでしたが、5月20日から31日まで、入口近くの展示スペースに剥製を展示し、入院・通院患者の皆様に楽しんでいただきました。
〇沖縄点字図書館
2ヶ所目は沖縄点字図書館(那覇市松尾)。利用者は視覚に障がいをお持ちの皆様です。当館には、日本バードカービング協会会長の内山春雄氏に製作していただいた、タッチカービング(視覚障がい者が触れても壊れにくいよう加工をほどこした木彫りの鳥)のヤンバルクイナ・ノグチゲラ・ホントウアカヒゲがあります。点字図書館では、これらを触ってもらって、やんばるの固有種について学んでいただくことにしました。5月24日に出前講座を実施し、鳴き声もあわせて聞いていただき、沖縄固有の鳥類について知見を深めてもらいました。写真は、全盲の参加者がヤンバルクイナのタッチカービングを触察している様子です。参加した皆さんは、「鳥ってこんな形だったんだ!」「ヤンバルクイナってこんなにクチバシが大きいんだね!」など、初めて知る鳥の形に心を奪われている様子でした。講座の後は約1週間、点字図書館にタッチカービングをお預けして、来館した皆様に触っていただきました。
これからも「愛鳥週間」は続く
当館には、まだまだ多くの鳥類の剥製が出番を待っています。「愛鳥週間」は絶好の機会ですので、これからも楽しい企画を考えていきたいです。また、「愛鳥週間」に限らず、そして館内外を問わず、当館の資料を活用する方法を模索していきたいと思います。