琉球王国時代、様々な地域との交流と独自の発展を経て豊かな「琉球の美」が形作られました。しかし、明治以降の近代化の波は、手づくりから機械生産へとものづくりの形を変えていきました。するとどうでしょう、機械が同じ規格の同じものを大量に作るようになります。これにより欲しいものが欲しいときに手に入るようになり、生活はだんだんと豊かになっていきました。しかし、機械が作れない難しい形や技術は無くなり、「琉球の美」が失われ始めたのです。さらに不運なことに、近代化の波に負けず琉球王国時代の技術を継承していた人達は、1945 年の沖縄戦で被災してしまい、多くの技術が失われてしまいました。
この事業では、近代化の波や沖縄戦を乗り越えて受け継がれてきた技術と、残欠等として断片的に残っている資料の科学分析等から、失われた「手わざ」を現代に蘇らせることに挑戦しています。他の都道府県でも復元事業は行われていますが、8つの分野を同時並行で実施している例はなく、全国的にも稀な規模の事業です。 平成27 年度から令和3年度までの第Ⅰ期では、沖縄戦で残欠を残すのみになった円覚寺仁王像や製作技術がわからなくなっていた琉球古刺繍の技術等、8分野65 件を復元し、県内外8か所で展覧会を行いました。
令和4年度から始まった第Ⅱ期では2年かけて資料選定を行い、沖縄戦で写真を残すのみになった中城御殿(なかぐすうどぅん)の板戸絵(いたどえ)等の戦災文化財を始め、首里城火災で被災した白密陀(しろみつだ)の漆器等も復元する計画になっています。白密陀の技法はほとんど解明されていないため修理に着手することもできていません。本事業を通して技術解明を行い、今後の修理につなげていくことが期待されています。
これらの復元は単純に姿形をうつすのではなく、科学分析を通して得られたデータを手掛かりに現代の技術者の皆さんと一緒に試行錯誤しながら、作られた当時の姿を取り戻すことを目指しています。
令和10 年には第Ⅱ期では35 件の模造復元が完成予定なので、楽しみにお待ちいただければ幸いです。
円覚寺仁王像復元製作の様子
琉球古刺繍復元制作の様子