写真1 「おもろさうし」(沖縄県立博物館・美術館蔵)
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写真2 「混効験集」(沖縄県立博物館・美術館蔵)
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写真3 「田名家文書」第1号(1523年)(個人蔵、当館寄託)
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今年は、琉球王国時代の16~19世紀に作られた「おもろさうし」・「混効験集」・「田名家文書」の琉球政府特別重要文化財指定から65年、国の重要文化財指定から50年の節目の年となります。「おもろさうし」は沖縄・奄美諸島各地に伝わるオモロ(神に捧げる祈りの歌)を首里王府が採録・編纂(へんさん)した歌謡集(かようしゅう)、「混効験集」は首里王府が編纂した古語の辞典です。「田名家文書」は首里の士(サムレー)である麻(ま)氏(うじ)・田名家に伝わった32通の辞令書と、直系の血筋や業績等を記した家譜(かふ)で構成される資料群です。いずれも沖縄を代表的する貴重な文化財です。
憂き目にあった文化財
沖縄の文化財はこれまで何度も憂(う)き目にあいました。中でも住民を巻き込んで繰り広げられた沖縄戦では、尊い人命だけでなく、琉球王国時代の貴重な文化財も多く失われました。戦後、荒廃し混乱した状況下、有志によってがれきに埋もれた文化財の残欠(ざんけつ)が収集され、1946年に首里に創設された博物館で保管・公開されました。また、「田名家文書」のように、戦前県外へ渡った子孫によって保管された文化財が沖縄に戻った例もありました。一方、戦時中に戦利品としてアメリカへ持ち出されたものもあり、県出身者らによる懸命な捜索と尽力の上、70年前の1953年に「おもろさうし」や「混効験集」等の文化財が返還されました。
戦後沖縄の文化財保護
戦後の沖縄は日本から切り離され、文化財に対する法的措置が講じられていませんでしたが、辛うじて残存した文化財は官民合同の自主的団体等によって保存され、散逸や流失、壊滅をまぬがれてきました。このような中、日本の文化財保護法(1950年制定)を参考として、1954年に沖縄の文化財保護法が制定されました。多岐に渡る保護対象の内、有形文化財の中で重要なものを重要文化財と指定し、その中から世界文化の見地から価値の高いもので、たぐいない住民の宝たるものを特別重要文化財に指定しました。「おもろさうし」・「混効験集」・「田名家文書」はいずれも史料的価値が高いことから、1958年に特別重要文化財に指定され、沖縄を代表する極めて重要な文化財であると認定されました。さらに復帰後、1973年に国の重要文化財に指定され、国を代表する文化財ともなりました。
2023年の顔といえる文化財
写真4 「展示公開 おもろさうし・混効験集・田名家文書」展示風景(1)
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写真5 「展示公開 おもろさうし・混効験集・田名家文書」展示風景(2)
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ちなみに「田名家文書」に含まれる最古の辞令書は1523年に発給されました。また田名家が輩出した沖縄産業界の功労者・儀間真常(ぎましんじょう)が、製糖法を学ばせるために儀間村の領民を中国(明)へ派遣したのは1623年でした。さらに「おもろさうし」の大部分は1623年に編集されました。
現在当館で展示公開中の「おもろさうし」・「混効験集」・「田名家文書」は、琉球・沖縄の歴史上、様々な出来事の節目を示しており、今年の顔とも言える文化財です。この機会にぜひご覧ください。
<展覧会情報>
展覧会名称:「展示公開 おもろさうし・混効験集・田名家文書」
開催期間:2023年6月1日(木)~7月30日(日)
開催場所:沖縄県立博物館・美術館 博物館常設展示室 歴史部門展示室