最終更新日:2021.12.06
今回の特集展『中城村のグスク―中城グスクと新垣グスク―』では展示資料が100点以上もあります。展示資料がかなりの数となった理由は、土器や陶磁器、金属製品といった考古資料が全体の9割以上を占めていることに因ります。遺跡から出土するモノを「遺物」と言いますが、遺物の大半は破損して使えなくなって捨てられたモノになります。今回展示する陶磁器類は破損により小さな破片となっている考古資料であるとから、必然的に点数が多くなります。
考古資料においては種類別に展示するのか、時代別に展示するのか、遺跡の調査区別に展示するのか、観覧者に分かりやすくするために展示方針を決めなければなりません。今回、考古資料を展示するにあたっては各章ごとに展示内容が異なり、種類別、時代別、調査区別と章により展示方法も異なってきます。なので、一見ややこしいように思われます。しかし、これは章ごとにコンセプトが異なるということなので、各章における展示内容を理解した上で展示資料を観覧していただきたく思っております。
(写真1:展示資料の配置作業➀)
(写真2:展示資料の配置作業②)
中城グスクの城壁は石で組まれていますが、その面石の面側に「L」、「△」、「十」といった印が刻まれています。この印は27種類にも及んでおり、おそらく金属製の工具を使って刻んだものと推測されます。それらが刻まれた理由についてはよく分かっていませんが、首里城にも同様の印が城壁に見られることから、おおよそ15世紀まで遡るものと思われます。
中城グスクの石積み解体工事の際に取り上げられた印の刻まれた石材「刻印石」を今回1点、展示しますが、この刻印石は今回の展示資料の中で最も重量のある資料であり、推定重量は約15㎏になります。なので、展示ケース内へ納めるのに2人がかりで行い、なんとか展示に見合った体裁に整うのに。また、刻まれた印を間近で見ていただきたいので、できるだけ展示ガラス面に近づけて展示しています。
(写真3:刻印石の展示)
令和3年11月30日に無事、開幕した特集展『中城村のグスク』ですが、これまで触れてきましたように、展示が始まるまでの準備には多くの時間と手間がかかっていることを知っていただけたかと思います。
展示関係者にとって、展示を手掛けた苦労が報われるのは展示開幕以降になります。展示が完成した時はその準備をしてきた苦労が胸に去来すると共に、観覧される方々は満足されるかどうか、といった不安も沸き起こってきます。そのような複雑な心境で展示初日を迎えましたが、このコラムを読まれた方はもちろんのこと、多くの方々に当展示を観覧していけることを願っております。
(写真4:着々と進む展示準備作業)
主任学芸員 山本正昭