1. 3万年前に航海に挑戦した人たちにどんなことを聞いてみたいですか?

3万年前に航海に挑戦した人たちにどんなことを聞いてみたいですか?

最終更新日:2019.08.21

 先日、国立科学博物館の海部陽介氏をリーダーとする「3万年前の航海徹底再現プロジェクト」が、台湾~与那国間の丸木舟による実験航海に成功し、大きな話題となりました。当館もプロジェクトの協力機関となっており、6月28日~7月15日の会期で、エントランスホールにおいてプロジェクトの概要を説明するパネル展示とプロジェクトの経過をまとめた映像の放映を行い、ささやかながら応援企画を実施しました。
 その応援企画では、現代に生きる私たちが旧石器時代に琉球列島を目指した人々へどのように想像をめぐらせるのかを垣間見たい、との思いから、「3万年前に航海に挑戦した人たちにどんなことを聞いてみたいですか?」というアンケートを実施し、来館者にご協力頂きました。以下に、そのアンケートへの回答として寄せられた来館者の方々の質問内容を抜粋して紹介し、お礼の気持ちを込めてすこしばかり私からのコメントを書き記しておきたいと思います。
 
来館者からの質問1:船はどんな形状ですか?
 
来館者からの質問2:どうやって船を作ったんですか?

 船そのものがどんなものであったかという質問が多く寄せられました。3万年前の技術水準や利用可能な材料を想定しながら、草舟、竹筏舟、丸木舟による実験を行い、丸木舟にいたってとうとう台湾~与那国間の航海に成功したプロジェクトでしたが、プロジェクトメンバーのみなさんも3万年前の人々がどんな船で航海したのか、大いに頭を悩ませたところだと思います。いったい素材や加工具はどんなもので、何人乗りの舟だったのでしょうか?
 残念ながら、これまでのところ沖縄周辺の遺跡からそれらを知る確実な証拠は得られていません。しかし、今後、今回の実験成果が3万年前の航海について多くの実りある情報を提供してくれることでしょう。詳細な報告が待ち遠しいですね。

来館者からの質問3:船団を組んで?何度も?なぜ海を渡ったのだろう?
 
 1艘よりも2艘、2艘よりも3艘の方が推進力が強まるし、仲間も大勢の方が安心感がありますから、船団を組んだ方が遠くまで確実に舟で移動できたと思います。ですから、3万年前の人々は複数の船でやってきたのかもしれません。今回のプロジェクトでは驚くべきことに、1艘で成功してしまいましたが。。。
 何度も渡海して人々が移住したのかどうか。これも興味ある問題ですが、今のところそれを知る手がかりは少ないです。ただ、近年の発掘で発見された2万7千年前の石垣島の白保人と2万2千年前の沖縄島の港川人の顔つきや体つきはだいぶ違うので、異なるルーツを持つ人々が沖縄へ異なるルートをたどってやってきた、と考える必要もあるかもしれないですね。
 3万年前の人々はなぜ海を渡ったのか?このプロジェクトが解明に取り組んでいる最も大きな謎のひとつだと思います。海の先にわずかに見えた土地が彼らの好奇心を駆り立てたのでしょうか?はたまた、海の向こうに行かなければならない何らかの理由があったのでしょうか?想像をふくらませると楽しいですね。
 
来館者からの質問4:食事はどんな料理をしていたのですか?星はキレイでしたか?
 
 舟の上では料理が難しいですから、3万年前の人々は飲み水と保存食のようなものを携帯していたのではないかと想像します。
 舟の上で見る星はきっと格別な美しさだったでしょう。天気が良ければ海面に満天の星が写り込み、宇宙を旅しているような感覚だったかもしれませんね。
 
来館者からの質問5:夜の航海や睡眠などはどうしているのですか?
 
 昼は太陽の方向で方位を推定。夜は月の位置と星座の位置で方角を推定していたのではないかと考えられており、今回の実験航海でもそのような方法を取ったそうです。また、舟の上で睡眠をとることも大変難しかったはずですが、海流に流されずに目的地の方向へと向かうには、漕ぐことを完全に止めてしまっては危険ですから交互に休憩をとるなどの工夫が必要だったはずです。
 
 最後に私が聞いてみたいことを紹介してこのコラムを終わりにします。
 
私の質問:ツラい航海での一番の思い出は何ですか?
 
 コラム読者の皆さんは、3万年前に沖縄へやって来た人たちにどんなことを聞いてみたいですか?

学芸員 澤浦亮平

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