貝塚の話

最終更新日:2017.04.26

貝塚は、古代の人々が食べた貝殻が積み重なってできた遺跡です(図1)。貝塚は、北海道から沖縄まで日本列島各地に分布しており、それぞれの地域で特色ある貝塚が残されています。炭酸カルシウムを多く含む貝殻からなる貝塚では、酸性土壌に覆われた通常の遺跡では保存され難い動物骨や人骨がよく保存されているため、古くから考古学・人類学的調査の対象となってきました。 

日本の中で最も高密度かつ大規模な貝塚が分布する地域は東京湾沿岸で、縄文時代早期以降、数多くの貝塚が形成されています。この地域では、縄文時代中後期になると、環状貝塚や馬蹄形貝塚と呼ばれる大規模な貝塚が発達し、加曾利貝塚(千葉県千葉市)や曽谷貝塚(千葉県市川市)のように直径150~200mに達する巨大な貝塚も見られます。 

沖縄でも、伊波貝塚(うるま市)や荻堂貝塚(北中城村)、室川貝塚(沖縄市)などで比較的大規模な貝塚が知られていますが、貝殻の分布は50~100m程度で、関東地方の貝塚に比べると小規模なものと言えます(図2)。伊波貝塚をはじめとする縄文時代の貝塚は、一般的に石灰岩台地の崖線に沿って形成されており、弥生・平安並行時代の砂丘上に立地する貝塚とは異なっています。縄文時代の貝塚は、台地上の集落に居住した人々が、集落で出たゴミを崖下に投棄することによって形成されたもので、貝塚と居住域は区別されていたと考えられています(図3)。 

亜熱帯に属する沖縄では、島々の周囲にサンゴ礁が発達し、河口にはマングローブが見られます。沖縄の貝塚からは、サンゴ礁域やマングローブなどで得られる貝類の貝殻や魚骨が多く出土しています(図4)。こうした貝殻や魚骨を細かく調べることによって、当時の人々のくらしを詳しく知ることができるのです。
図1 伊波貝塚(うるま市)の貝層

図1 伊波貝塚(うるま市)の貝層

 
図2 貝塚の規模の比較(A加曾利貝塚、B曽谷貝塚、C伊波貝塚)

図2 貝塚の規模の比較(A加曾利貝塚、B曽谷貝塚、C伊波貝塚)

 
図3 集落と貝塚の関係(うるま市古我地原貝塚の模型)

図3 集落と貝塚の関係(うるま市古我地原貝塚の模型)

 
図4 沖縄先史時代における海産資源の利用(上:内湾域・下:サンゴ礁域)

図4 沖縄先史時代における海産資源の利用(上:内湾域・下:サンゴ礁域)

主任 山崎真治

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