最終更新日:2016.10.26
世代を超えて、沖縄の出自を愛する人々に敬意を払うとともに、共感する心を育むことを目的に10月21日から12月4日まで、博物館常設展示室(美術工芸室・歴史室)で「ウチナーンチュの世越の肝心(ユークイティヌチムグクル)」と題する特別展示を開催しています。第6回世界のウチナーンチュ大会の関連催事であり、展示会では、移民の歴史や渡航の際の身分証明書(パスポート)、戦火を受けた沖縄に海外から贈られた品などが出展されています。
なかでも、美術工芸部門室に展示してある「与那嶺・福田コレクション」は、ハワイ在住の福田経子氏の御尊父である与那嶺眞淳氏(1902~1995)が戦前、戦後を通して収集した沖縄関係の資料です。与那嶺眞淳氏は、戦前に那覇市首里にあった実家の地下に陶器類など日用雑器を埋めて熊本に疎開します。戦後、沖縄に戻り、焼け野原となったその場所で、地下から探し出した時には、とても感激したそうです。その後は、琉球石油株式会社(現:りゅうせき)の創立に関わり、1963年に退職。1979年に娘の経子氏(日系ハワイ2世に嫁ぐ)とともにハワイに移住しました。慣れない海外生活でしたが、沖縄の陶器や風景が描かれた絵画に囲まれ、三線を弾いて、遠く離れた郷里を思い描き日々を暮らしたそうです。与那嶺氏が収集したコレクションは、ハワイ大学やホノルル美術館において展示会に出品されるなど、沖縄の歴史や文化を紹介する役割を果たしました。今回、福田経子氏から、第6回世界のウチナーンチュ大会を機に、これらのコレクション128点を当館にご寄贈いただきました。福田氏は「今度は、沖縄文化の振興や教育に役立ててほしい」と当館に想いともに託していただきました。ハワイで沖縄の人々を励ました資料を通して沖縄の美術工芸の魅力、そして移民の歴史資料などをぜひご覧下さい。
主任学芸員 外間一先