最終更新日:2015.01.29
今年で3回目の 仲里学芸員と行く「嘉津宇岳(かつうだけ)ジオツアー」を開催しました。
ちなみに「ジオ」とは「大地」「地形」「地質」などの意味を含んでいて、英語では地理を「Geography」地質学を「Geology」といって、ジオ「Geo」からはじまります。そこで、ジオツアーとは地球科学等の専門家による解説を聞きながら、自然景観の仕組みや成り立ちを読み解くツアーです。嘉津宇岳を選んだのは、そのジオツアーに適していると考えたからです。
嘉津宇岳は名護市の西方にある標高452mの古期石灰岩でできた山です。隣接する八重岳(やえだけ:標高453m)・安和岳(あわだけ:標高432m)とともに、カルスト地形(石灰岩特有の地形)を形成し、貴重な動植物が多く生息していることから、昭和47年に県指定の天然記念物〈天然保護区域〉になりました。
特に本部半島に見られる石灰岩は、三角山の地形を持っていて、まるでピラミッドがあるかのように見えます(写真1)。また、山の頂上付近では、とがった石灰岩がむき出しになってます(写真2)。これは、石灰岩が雨水によって溶けてしまうため、硬い部分が溶け残って、鋭くとがった形状をします。
嘉津宇岳では、1.古生代ペルム紀の古い石灰岩。2.海岸付近で新生代第四紀の石灰岩。3.海中では、現在成長を続けているサンゴ礁(将来の石灰岩)。の3つを同時に見ることができます。石灰岩はもともと過去のサンゴ礁から形成された岩石なので、この地域が海中にあったり、地殻変動で陸地になったことを説明することができます。また石灰岩地域は、地下水も豊富にあるため、湧水も至る所に見られます。小さな沖縄島にとって、大切な水資源を確保できる重要な役割を持っています。
しかし、残念なことに、古い石灰岩はセメントの原料やバラスト石としても利用されるため、いたる所で採掘が行われています(写真3)。
私たち現代人にとっては、単純に「石」としてしか扱われない石灰岩ですが、長い時間と水中生物の活動によって作り上げられた石灰岩は、大切な大地の遺産と言っても過言ではありません。このような大地の遺産を、観光資源として活用し、保全してほしいものです。そのためのジオツアーなのですが・・・。
それはさておき、実際に山に登って、石灰岩に触れながら「石」の話を聞くのは、普段経験できないことので、結構楽しいと思います。ぜひ、山に登るときのは、足下にある大地が、どのように作られたのかを想像してみて下さい。一風変わった景色を見ることができると思います。今度 ジオツアーでお会いしましょう!
主任学芸員 仲里 健