最終更新日:2013.06.21
写真1 貝で作られた矢じり
写真2 石で作られた矢じり
写真3 ウグイスガイの仲間の貝(上)と実験的に製作した矢じり(再現品)(下)
先史時代の沖縄の人々は、サンゴ礁がもたらす豊かな恵みをさまざまな形で利用していました。沖縄各地の遺跡から発見されるたくさんの貝殻は、当時の人々の食料だったと考えられていますし、貝殻で作られた腕輪やビーズなどのアクセサリー類も数多く発見されています。
それだけではありません。沖縄の遺跡から、時折、貝殻で作られた矢じりが発見されることもあります(写真1)。当館が発掘調査を行っている南城市武芸洞遺跡では、こうした矢じりが10点以上発見されました。このような矢じりは、普通、黒曜石やチャートなどの硬い石で作られることが多いのですが(写真2)、沖縄では真珠層をもつウグイスガイの仲間の貝殻が、しばしば矢じりに利用されています(写真3)。
貝の矢じりがどのように使われたのか、詳しいことはまだわかっていません。石と違って、貝殻の矢じりは実用品ではないという意見もあります。イノシシのように皮肉の厚い動物を、このように華奢な矢じりで仕留めることは難しいのかも知れません。陸獣ではなく、魚を捕えるために使われたのではないか、という意見もあります。しかし、沖縄のようにサンゴ礁の発達する地域では、わざわざ弓矢を使わなくても魚を捕まえることはさほど難しくありません。
銀色に輝く不思議な貝の矢じり・・・みなさんはどのように使われたと思いますか?
主任 山崎真治