お墓めぐりのこと

最終更新日:2009.08.20

クロイワトカゲモドキ

クロイワトカゲモドキ

フタオチョウ

フタオチョウ

クロイワゼミ

クロイワゼミ

この数年、夜のお墓めぐりにこっている。別に、幽霊に会いたいわけではない。お墓が好きというわけでもない。目的は、沖縄島中南部の動物たち(主に両生爬虫類)を調査するためである。中南部で、こうした動物たちの姿を求めるなら、石灰岩地に残った森を探すのが一番なのだが、そんな森には、なぜかお墓がある。というよりも、お墓のある場所の森が残っているというのが実情なのだろう。
 
さて、沖縄島中南部には、ヤンバルクイナはいないし、ノグチゲラも見つからない。だから、中南部の自然はたいしたことない。極端な人は、中南部には自然は残っていない、と思っていないだろうか。ところがどっこい、お墓の森では、県指定天然記念物のクロイワトカゲモドキやフタオチョウなどが見つかるし、希少種のアマミタカチホヘビやクロイワゼミなどにもお目にかかる。その他、様々な昆虫類やクモ類を見ることができるのだ。 

いろいろな動物に出会えてラッキー!、と最初は思っていた。そして、なぜこんなにもいろんな動物がいるのだろうという疑問も出てきた。何度か同じ場所を訪れてみると、クロイワトカゲモドキやアマミタカチホヘビなどは、いつものメンバーがそこにいるように思われる。どうやら、お墓の中が動物たちの絶好の隠れ家になっているようだ。暗く、じめじめしたお墓の中は、よく考えると深い森の中と同じ環境なのかもしれない。お墓の森の調査からは、沖縄島中南部の動物相も捨てたものではないこと、しかし個体数は多いわけではなく、その未来は楽観できるものではないことなど、いろんなことが見えてきそうである。 

そんな訳で、また今夜もお墓めぐりに出かけることになりそうだ。それにしても、自分たちのお墓が、動物たちのすみかになるなんて、お墓の中の人は、どう思っているのだろう。 

それから最後に、お墓の森にはハブもいる。もし出かけてみようと思った方は、ご注意。ご注意。

博物館副館長 千木良 芳範

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