1. 特別展「琉球弧の葬墓制-風とサンゴの弔い-」

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博物館 特別展

特別展「琉球弧の葬墓制-風とサンゴの弔い-」

2016年09月25日(日) ~ 2016年11月23日(水)

特別展「琉球弧の葬墓制-風とサンゴの弔い-」
【開催形式】
主  催:沖縄県立博物館・美術館
後  援:沖縄県教育委員会、沖縄民俗学会、沖縄考古学会、沖縄県地域史協議会
協  力:東海大学海洋学部海洋文明学科、鹿児島大学埋蔵文化財調査センター、宇検村教育委員会、瀬戸内町立図書館・郷土館、伊仙町歴史民俗資料館、伊是名村教育委員会、今帰仁村歴史文化センター、名護博物館、名護市教育委員会、宜野座村立博物館、恩納村博物館、読谷村立歴史民俗資料館、北谷町教育委員会、宜野湾市立博物館、宜野湾市教育委員会、沖縄県立埋蔵文化財センター、浦添市教育委員会、那覇市歴史博物館、那覇市立壺屋焼物博物館、那覇市環境保全課、国場民俗伝統芸能保存会、いなんせ典礼、糸満市教育委員会、糸満市上米次腹門中、宮古島市総合博物館、石垣市立八重山博物館、ハワイ大学マノア図書館ほか
 
【開催趣旨】
地球上の生物は生と死を繰り返しながら命の継承を続けている。その中で唯一人間だけが死者を弔い、死後の世界を想像して準備し、死後も子孫の手によって葬られ祀られる。人間のもつ死への観念は、世界の地域で様々な形で儀礼や習俗として表出する。奄美諸島から八重山諸島までの琉球弧でも、周辺地域との交わりによって影響を受けながらも風土に根ざした独自の死生観がはぐくまれ、死者の葬り方や祀り方にも独特の文化を築いてきた。なかでも亜熱帯の気候と珊瑚礁に囲まれた島の自然を利用し、死者を時間をかけて骨化させた後に洗い清めて墓に納める葬法は特徴的である。しかしながら、戦後、火葬への転換でこうした葬法も姿を消し、また近年では葬儀も墓も商業化して画一的になりつつある。戦後しばらく続いていた葬制と墓制も急速に変わりつつある。本展覧会では、琉球弧における葬墓制について、時代や地域ごとに整理して紹介するとともに、琉球弧の人々の死生観や祖先観について考える場とする。
 
【展示内容】
(1)コンセプトと概要
※「ふだんめったに見られないもの(墓の中、厨子の中等々)を見る展示」
・考古資料や文献史料を用いて、先史時代から近世・近代の葬墓制を整理して紹介する。
・死者の弔い方を葬具や供物類を模型と組み合わせて再現展示し、野辺送りの儀礼を実際に使われていた龕や弔旗、戦前の写真や現代の映像・写真等を展示する。
・現存する古墓の写真や模型を通じて墓の変遷や役割を示し、風葬と洗骨儀礼を視覚的に説明する。
・戦後の火葬の普及と葬送儀礼の外部化、商業化による変化など、現代社会の葬制の現状と課題を取りあげる。
・墓の変化の社会的背景を探り、都市化とともに墓地と住宅とが隣接する現代社会における行政の取り組みや墓地整備の現状等を紹介し、最後にアンケート調査の結果を提示する。
 
(2)構成
本展示会は以下の7章で構成した。
プロローグ 葬墓制の世界
本展示の概要及び用語解説を提示した上で、世界からみたいろいろな葬法のあり方をパネル等で概観し、琉球弧を含む東アジアの葬
法の特徴等を説明した。
〔主な展示物〕東アジアの墓の写真パネル(中国・マレーシア・インドネシア・台湾・韓国等)、世界の葬法概略マップ
 
第1章 先史からグスク時代の葬墓制
琉球列島の埋蔵文化財の実物資料(発掘された人骨)や写真、副 面縄第1貝塚の人骨展示の展示を通して、先史からグスク時代の葬法を埋葬墓と崖葬墓に分けて展示した。
〔主な展示物〕トチマン遺跡、武芸洞遺跡、面縄第1貝塚、木綿原遺跡、具志川島遺跡群、大当原遺跡、安座間原遺跡、後兼久原遺跡等の人骨と模型、副葬品、写真パネル。
 
第2章 史料がかたる近世の葬墓制
近世の葬法や墓に関する史料を基に年表を作成し、土葬や風葬が併存していた時代から徐々に風葬に集約されていく時代背景等について史料を通して説明した。
〔主な展示物〕『海東諸国紀』『重刻 中山伝信録』『服制』『四本堂家礼』『琉球国葬式図』『八重山島規模帳』『口上覚』等、ようとれのひのもん・極楽山碑文、板良敷村墓碑、『琉球風俗絵図』のパネル等。
 
第3章 今に伝わる葬具と葬送儀礼
風葬を行っていた明治以降の葬送儀礼について、葬具や龕等の実物資料と映像や写真パネルを通して、通夜の再現展示や野辺送り等の儀礼を紹介した。
〔主な展示物〕葬式幕(久米島・読谷)、葬礼服(着物)、与那国・読谷・名護の龕や天蓋、石垣市大浜の龕幕と下絵図、供物類を模型と組み合わせて再現展示、与那国と西表の野辺送りの映像、副葬品等。
 
第4章 風葬と墓
  死者を葬る場所に着目し、墓として形作られていく過程を写真や絵で説明した。現存する古墓の写真パネルを用いてさまざまな形態の墓があることや立地場所・材質・工法などについても解説した。また、原寸大の破風墓の模型で墓室内部を再現展示し、厨子甕の役割や形の変遷等についても説明し、洗骨儀礼については糸満市のジョーアキー(墓開き)儀礼事例として映像で紹介した。
〔主な展示物〕原寸大模型と厨子甕による墓の再現展示、厨子甕各種、漢那ウェーヌアタイ木槨墓(木製家型墓)の古材、百按司墓の木槨墓(板墓)屋根部材、墓の断面模型、各地域の古墓写真パネル、糸満上米次腹(門中)ジョーアキー(墓開け)儀礼の映像等、運天の板門墓の扉、輝緑岩の石厨子、各種厨子甕、
尚寧王妃の墓誌、瓦証文等。
 
第5章 火葬の普及と葬墓制の変化
  戦後、火葬が普及した背景を公文書や新聞資料等を用いて解説した。また、地域で行っていた葬送儀礼から業者委託へと変化する、いわゆる外部化、商業化によって画一化された葬送儀礼の現状を資料やパネル等で説明した。
〔主な展示物〕公文書(「墓地取締に関する文書」、「墓地反対の陳情書」等)、辻原の墓地移転、喜如嘉の火葬場建設に関する新聞記事、宜野座村志武田原共同墓地の墓石、現代の葬具(木棺や骨壺、かりゆしウェアの喪服等)、『八重山蔵元絵師画稿(仏壇の図)』、葬式の写真パネル等。
エピローグ これからの葬墓制
  墓の継承や管理の問題、都市計画等にともなう整備等の行政の取り組みや住民の意識について、市町村や当館が実施したアンケート調査の結果等から紹介した。また、各市町村の墓地基本計画等の刊行物をハンズオン展示にして、沖縄の葬墓制の将来を考える場を提供した。
〔主な展示物〕アンケート調査集計パネル、各市町村の墓地基本計画等刊行物、各市町村の墓地調査パネル、奄美大島宇検村の共同墓地建設関係資料等
 
【関連催事】
(1)シンポジウム「琉球弧の葬墓制-その地域と時代-」
日 時:10月31日(土)14:00~17:30
場 所:3階講堂、サブ会場:ホワイエ
プログラム:
第一部 事例報告(発表順)
片桐千亜紀(当館主任学芸員)
「琉球弧における先史時代の多様な葬墓制」
安里進(当館館長)
「王墓から見た沖縄の墓」
田名真之(沖縄国際大学教授)
「近世の葬墓制 ―士族層を中心に―」
金城善(元糸満市立図書館長)
「南山王の墓と地人門中の墓」
仲原弘哲(今帰仁村歴史文化センター館長)
「ヤンバルの墓からみえる葬墓制」
津波高志(琉球大学名誉教授)
「琉球弧における土葬と風葬」
第二部:シンポジウム
パネリスト:同上
コーディネーター:津波高志
参加者:340名
 
(2)文化講座①「葬送儀礼の移りかわり」
日 時:10月17日(土)14:00~16:00
場 所:3階講堂
講 師:崎原恒新(沖縄県文化財保護審議会委員)
参加者:167名
 
(3)文化講座②
日 時:11月21日(土)14:00~17:00
場 所:3階講堂、屋外展示場の民家前
プログラム
第一部:「死者とつながる琉球弧の哭きうた(葬送歌)の世界」
講師:酒井正子(川村学園女子大学名誉教授)
第二部:国場の念仏エイサー「花ぐらん」の上演
講師:城間秀雄(国場民俗伝統芸能保存会初代会長)
出演:国場民俗伝統芸能保存会
参加者:190名
 
(4)学芸員講座「洗骨儀礼について考える」
日 時:10月3日(土)14:00~16:00
場 所:博物館講座室・特別展展示室
講 師:大湾ゆかり(当館主任学芸員)
参加者:129名、展示解説会72名
 
(5)巡見ツアー①「今帰仁村と名護市の古墓巡り」
日 時:10月24日(土) 9:00~17:00
場 所:今帰仁村(平敷大主の墓、大井川沿いの古墓群、百按司墓、大北墓等)
名護市(ナイクミ門中墓の展示会、プーミチャー墓等)
講 師:仲原弘哲(今帰仁村歴史文化センター館長)
比嘉ひとみ(名護市立中央図書館館長)
参加者:19名
 
②「那覇市内の古墓巡り」
日 時:11月14日(土)9:00~12:00
場 所:玉陵、毛氏豊見城殿内の墓、宜野湾御殿の墓、伊是名殿内の墓等
講 師:古塚達朗(那覇市教育委員会文化財課長)
参加者:19名
 
(7)展示解説会
日 時:9月26日14:00~15:00
場 所:特別展展示室
講 師:片桐千亜紀・大湾ゆかり(当館主任学芸員)
参加者:52名

特別展「琉球弧の葬墓制-風とサンゴの弔い-」
 

展覧会情報

会期 2016年09月25日(日) ~ 2016年11月23日(水)
場所 特別展示室1,特別展示室2,企画展示室
開館時間 9:00~18:00(金・土は20:00まで) ※入場は閉館の30分前まで
休館日 毎週月曜日
主催 沖縄県立博物館・美術館
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