【開催趣旨】
琉球は、1609年の薩摩による琉球侵攻後、徳川将軍や国王の代替わりに際して、江戸へ赴く琉球使節の派遣を行っていた。片道約2,000㎞におよぶ旅をした琉球使節は、ルート上に位置する各地や目的地の江戸で様々な交際関係を築いていた。本展示会では、琉球使節の旅模様を中心に、薩摩の支配という逆境を受容しながら、限定されたなかで自立を模索した琉球王国における外交戦略を示しつつ、琉球使節の果たした役割を浮かび上がらせることを目的とする。
【開催形式】
主催:沖縄県立博物館・美術館
後援:(財)海洋博覧会記念公園管理財団、(財)国立劇場おきなわ運営財団、沖縄タイムス社、琉球新報社、NHK沖縄放送局、沖縄テレビ放送、琉球朝日放送、琉球放送、ラジオ沖縄、エフエム沖縄、タイフーンfm、エフエムレキオ
協力:海と船の博物館ネットワーク、日光東照宮宝物館、日光山輪王寺宝物殿、東京都教育委員会、名古屋市鶴舞中央図書館、瑞泉寺、清見寺、一宮市尾西歴史民俗資料館、豊橋市二川宿本陣資料館、彦根城博物館、福山市鞆の浦歴史民俗資料館、広島県立歴史博物館、呉市、呉市教育委員会、満舟寺、鹿児島県立図書館、鹿児島県歴史資料センター黎明館、鹿児島市立美術館、鹿児島大学附属図書館、尚古集成館、沖縄県公文書館、沖縄県立図書館、那覇市歴史博物館、琉球大学附属図書館、金武町教育委員会、屋嘉公民館
【展示内容】
本展示会では、江戸へ派遣された琉球使節を主役とし、琉球から江戸に至る使節たちの旅を写真や地図、情報コンテンツ等を用いて情景豊かに紹介するとともに、琉球と各地との広く深いつながりを資料とともに具体的に示す。加えて、江戸へ琉球使節を派遣した意義を外交上の視点からとらえた上で、自らの状況とそれに対する戦略の解説を随所に配置する。
また、展示会をより立体的にするため、江戸への琉球使節をテーマとしたシンポジウムや文化講座を行う。さらに、契機となった薩摩による琉球侵攻をテーマとしたシンポジウムをプレイベントとして5月に実施する。展示構成では琉球使節の旅と大和との出会いを主軸とする。薩摩の支配下に至る経緯や幕府の思惑、琉球と中国との関係、近世期の琉球の特徴はトピックとして据えた。
(展示構成)
プロローグ 琉球使節のすがた~ガイドブックに描かれた使節たち
展示の主役として登場する琉球から江戸へ派遣された琉球使節が、どのようなすがただったのか、大和で出版されたガイドブックに描かれた使節たちの絵をコラージュしたパネルを設置し、具体的なイメージが湧くような導入とした。
第一章 琉球使節の旅
1609年の薩摩による琉球侵攻以降、薩摩の支配下に置かれた琉球は、薩摩藩主に伴われて徳川将軍への使節派遣を行った。これは、徳川将軍や琉球国王の代替わりに対するあいさつを行うことが目的であった。琉球から約2,000㎞にわたる江戸への長旅では、宿や馬の提供や見物人など使節を迎える様々な人々がいる一方、旅中に亡くなる者もいた。ここでは、琉球使節たちの旅をたどり、それに関わる各地のすがたを示した。
1.出発~2,000㎞の旅へ
・トピック1:薩摩による琉球侵攻
2.鹿児島~瀬戸内海へ
3.大坂~東海道、江戸
・トピック2:冊封体制下の琉球と薩摩による琉球支配
第二章 琉球使節、将軍と会う
江戸に到着した後、琉球使節たちは旅の最大の目的である徳川将軍への謁見に臨んだ。江戸城には演奏隊による路次楽を奏でながら行列を組んで登城し、将軍へあいさつをする儀礼を行っていた。また、江戸での滞在中、初期には日光東照宮、のちに上野東照宮への参拝を行っていたことを示した。
1.将軍へのごあいさつ
・トピック3:薩摩からの自立と依存~政治・外交・経済
2.東照宮への参拝
第三章 琉球使節へのまなざし
約1年にわたる琉球使節たちの旅では、琉球から将軍や大和の各地に贈答品を贈り、文化的な交流や情報交換を行ながら、「異国」「文化的に優れた」琉球の存在をアピールしていた。一方、大和の各地では琉球使節たちへの関心が高く、使節に関する様々な書物の出版、知識人たちの琉球や中国の情報収集などに如実に現れている。
ここでは、琉球使節の江戸参府をめぐる琉球側と大和側の視点を示した。
1.御取合(ウトゥイエー)~琉球からの視点
2.「琉球」への関心~大和からの視点
第四章 小国家・琉球王国の戦略~自立を模索して~
江戸へ派遣した琉球使節を送り出した琉球王国は、薩摩や幕府および中国との関係を保ちつつ、自らの立場の維持を図る一方、大和や中国の文化情報を受容しながら、独自の琉球文化を形成した。ここでは、大国に挟まれながらも、政治的・文化的な戦略から自国の生き残りを図った琉球を紹介する。
1.江戸への琉球使節派遣の変遷と琉球の思惑
2.琉球文化の発展と成熟
・トピック4:琉球使節と幕末
【関連催事】
①プレイベント
名 称:第384回博物館文化講座 博物館特別展プレイベント
シンポジウム「薩摩の琉球侵攻400年を考える」
講 師 等:上原兼善(岡山大学特任教授)、紙屋敦之(早稲田大学文学学術院教授)、弓削政己(奄美郷土研究会会員)、真栄平房昭(神戸女学院大学教授)、高良倉吉(琉球大学教授)、豊見山和行(琉球大学教授)
開催日時:2009年5月9日(土)13:30 ~ 18:30
開催場所:沖縄県立博物館・美術館 3階講堂、1階博物館講座室、美術館講座室、博物館実習室
開催形式:主催 沖縄県立博物館・美術館
共催 榕樹書林、株式会社メディア・エクスプレス
内 容:琉球・沖縄は三山統一、薩摩による支配、明治政府による琉球処分、沖縄戦、日本への施政権の返還という大きな節目を経てきた。2009年はそのひとつ、薩摩藩の島津氏による琉球侵攻から400年を迎えることとなった。この事件が持つ意味についてはしばしば取り上げられてきたが、情緒的に語られる傾向が無きにしもあらずで、必ずしも学術的に整理され議論されてきたとは言いがたい。琉球史研究の第一人者である上原兼善氏の講演を基調とし、琉球使節の江戸参府をテーマとした博物館特別展のプレイベントと位置づけ、多方向からこの出来事を照射した視点を交えて、その実像を浮かび上がらせることを目的とする。合わせて、現代に生きる私たちにとってどのような意味を持つのかということも考える機会とする。
参加者数:540名
②文化講座
名 称:第389回博物館文化講座
「琉球使節像の変遷と対日本関係-屈辱・偏見から「御取り合い」へ-」
講 師:豊見山和行(琉球大学教授)
開催日時:2009年10月17日(土)14:00 ~ 16:00
開催場所:沖縄県立博物館・美術館 3 階講堂
開催形式:主催 沖縄県立博物館・美術館
内 容:特別展「琉球使節、江戸へ行く!」展関連講座として、江戸幕府に派遣された琉球使節の見方をめぐる戦前以来の言説(中国装束を強制されたなど)の誤解・誤読の考え方に対して、文書や絵巻物などの丹念な研究から引き出された新たな琉球使節像に迫る。
参加者数:160名
③シンポジウム(対談)
名 称:第390回博物館文化講座 対談「琉球使節のすがたを求めて」
講 師:横山 學(ノートルダム清心女子大学 生活文化研究所 所長・教授)
深澤秋人(沖縄国際大学、琉球大学、沖縄キリスト教短期大学非常勤講師)
開催日時:2009年11月21日(土)14:00 ~ 17:00
開催場所:沖縄県立博物館・美術館 3階講堂
開催形式:主催 沖縄県立博物館・美術館
内 容:特別展「琉球使節、江戸へ行く!」展関連講座として、江戸へ派遣されることに対する琉球使節の意識と各地との交流や、使節に向けられた大和の民衆・知識人のまなざし、江戸時代末期の使節に対する意識から明治維新以降の維新慶賀使を示した上で、琉球使節の果たした役割とその背景を探り、その具体的なすがたを浮かび上がらせる。
参加者数:180名
④特別展示解説会
名 称:特別展示解説会「琉球楽器を語る」
講 師:上江洲安亨(( 財) 海洋博覧会記念公園管理財団 首里城公園管理センター 事業課調査展示係長)
開催日時:2009年10月9日(金)18:00 ~ 19:00
開催場所:沖縄県立博物館・美術館 3階博物館企画・特別展示室1・2
開催形式:主催 沖縄県立博物館・美術館
内 容:特別展「琉球使節、江戸へ行く!」展関連催事として、江戸への琉球使節が江戸城や薩摩屋敷などで披露した御座楽で使用した琉球楽器について、尾張徳川家伝来の琉球楽器(徳川美術館蔵)の調査及び復元制作に携わった立場から、講師に琉球楽器について解説を行っていただく。
参加者数:約30名
⑤展示解説会
名 称:展示解説会「琉球使節、江戸へ行く!」
講 師:崎原恭子(沖縄県立博物館・美術館)
開催日時:2009年10月10日(土)、17日(土)、11月14日(土)、28日(土)11:00 ~ 12:00
※17日のみ17:00 ~ 18:00
開催場所:沖縄県立博物館・美術館 3階博物館企画・特別展示室1・2
開催形式:主催 沖縄県立博物館・美術館
内 容:特別展「琉球使節、江戸へ行く!」展関連催事として、展示内容を来館者に紹介する。
参加者数:延べ約90名
⑥博物館体験学習教室
名 称:博物館体験学習教室「行列図の巻物をつくろう」
講 師:當間巧(表具師)
開催日時:2009年10月11日(日)、11月8日(日)9:00 ~ 12:00
開催場所:沖縄県立博物館・美術館 1階博物館実習室
開催形式:主催 沖縄県立博物館・美術館
内 容:特別展「琉球使節、江戸へ行く!」展関連催事として、琉球使節の行列図を巻物に仕立てる体験学習を行う。
参加者数:20名
⑦路次楽の楽器体験
名 称:路次楽の楽器を体験しよう!
開催日時:2009年11月10日(火)~29日(日)9:00 ~ 18:00
開催場所:沖縄県立博物館・美術館 1階博物館ふれあい体験室
開催形式:主催 沖縄県立博物館・美術館
協力 ( 財) 海洋博覧会記念公園管理財団 首里城公園管理センター
内 容:特別展「琉球使節、江戸へ行く!」展関連として、首里城公園管理センターにて復元された琉球使節の行列で奏でられた路次楽の楽器に触れる。