1. 企画展「ずしがめの世界」

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博物館 企画展

企画展「ずしがめの世界」

2008年09月17日(水) ~ 2008年10月13日(月)

企画展「ずしがめの世界」
 沖縄では遺体を墓室内に安置(風葬)し、その後親族が骨を洗う「洗骨」がおこなわれていた。厨子甕(ずしがめ)とは、洗骨後の遺骨を納める納骨器のことである。洗骨習俗は沖縄の他に、奄美諸島、中国南部や台湾、朝鮮半島などに分布しているが、沖縄では納骨器としての厨子甕がさまざまな形や装飾の発達をみせていることが大きな特徴である。ゆえに、厨子甕は沖縄固有の習俗であり、貴重な文化遺産である。
 厨子甕は、時代の別により形態・材質・製作法が異なり、土質や釉薬・装飾などの要素の他に、ミガチ(銘書)や副葬品などから厨子甕の編年をたどることができることから、葬墓制の歴史、さらには琉球・沖縄の陶業史の解明にもつながる重要な研究の一つである。
 沖縄県立博物館・美術館では、文化財保存の観点から、現在約1,200点近くの厨子甕を収集・保管しており、常設展示や企画展示等を通してその文化財的価値を広く県民に紹介している。しかし、信仰に関わる事物であることからこれを忌避する県民も多く、必ずしも本来の趣旨が理解されているとは言い難い。そこで本展の実施を通して厨子甕の文化財的価値を広く県民に紹介し、その意義を理解してもらう機会を提供することを目的とする。

【展示内容】
第1章 沖縄の葬募制と厨子甕
葬送儀礼として野辺送りの様子を中心に紹介した。また古くは風葬を伝統とする沖縄の墓が、追葬が可能なように工夫されているなど、墓の特徴やタイプを示した。

第2章 洗骨習俗と厨子甕
洗骨習俗が日本本土にはなく、沖縄・奄美諸島にみられる習俗であり、厨子甕の分布も洗骨習俗の分布と一致すること、また、類似した習俗として中国福建省・台湾の「拾骨」を紹介した。

第3 章 厨子甕の歴史
厨子甕がいつごろ作り出され、使われるようになったか、その歴史的変遷を紹介した。

第4章 木棺(板厨子)の世界
木棺(板厨子)について、今帰仁村の百按司墓や浦添ようどれ出土品からその特徴・年代的位置を紹介した。

第5章 石厨子の世界
石厨子について、輝緑岩製・石灰岩製・凝灰岩製・サンゴ石灰岩製の4つの材質別に、その特徴・年代的位置を紹介した。

第6章 陶製厨子
厨子甕の大半を占める陶製厨子について、甕型・御殿型(家型)の2つの型別に、その種類と特徴・年代的位置を紹介した。また、併せて土器壺と生産地の紹介もおこなった。

第7章 名品・珍品・転用品
数多い厨子甕の中でも名品・珍品とされるものを紹介し、併せて転用品の紹介もおこなった。

第8章 厨子甕の装飾
蓋や胴部の表面に線彫りや貼り付け等の技法を用いて鯱·獅子・法師・蓮花等の文様が描かれていることを紹介した。さらに、その造形の分析を通して、沖縄の美術工芸の歴史的変遷に関する解明が可能であることを示した。

第9章 銘書(ミガチ)を読み解く
銘書とは、厨子の蓋や胴部に墨字や線彫で書き記された銘のことで、被葬者の字名、屋号、姓名、死亡・洗骨年月日等が記されており、洗骨習俗の諸相を知る手がかりとなるだけでなく、広く沖縄の葬送をめぐる習俗全般を知るための一級の資料であることを紹介した。

第10章 副葬品など
死者を墓に納める際の副葬品は、あの世でも現世と同じような世界があるとの信仰から手ぬぐい・簪・キセル・硬貨などの日用品が主だったこと、厨子甕の中に納められるものの特別な例として「誌板」と呼ばれる墓誌の一種があることを紹介した。また、厨子甕以外に墓内へ納めるものとして「瓦証文」や「墓中符」の紹介もおこなった。

第11章 厨子甕と現代
戦後になって、洗骨から火葬への変化に伴って、厨子甕も火葬用小型壺に変化したが、少なくはなってきているものの昔ながらの大型の厨子甕を製作している陶工の方々もおり、最近は美術工芸品として県外からの製作依頼もあることを紹介した。また、現代では人間の死生観も様々に変化しているとされる中、独自の感性から新しいタイプの厨子甕(骨壺)を生み出している方々とその作品の紹介もおこなった。

企画展「ずしがめの世界」ちらし裏面
 

展覧会情報

会期 2008年09月17日(水) ~ 2008年10月13日(月)
場所 企画展示室
開館時間 9:00~18:00(金・土は20:00まで) ※入場は閉館の30分前まで
休館日 毎週月曜日
主催 沖縄県立博物館・美術館
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