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日に焼けた浅黒い肌の老婆が、片膝を立てて座り、遠くを見つめています。
結い上げた白髪には「ジーファー」と呼ばれる沖縄の伝統的な簪が挿され、藍染の着物は胸元が大きく開き、袖はまくりあげられています。
手の甲には、かつて沖縄独特の風習として行われていた入れ墨の「ハジチ」が施されています。
老婆の傍には幼い子どもが2人座り、色とりどりの模様が染められた紅型の着物を着ています。
彼らの背後には南国を思わせる植物が青々と茂り、その奥には沖縄独特の形をした亀甲墓が連なっているのが見えます。
藤田は、1938年に沖縄を訪れました。
すでに画家としてパリで名を馳せていた藤田。その鋭い観察力をもって沖縄の人物や風物が描き出されたこの作品は、沖縄らしいモチーフがひとつの画面に合わされ、藤田の持つ沖縄のイメージを鮮明に伝えています。