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館長あいさつ

  館長に就任して5か月が過ぎました。40年近くの学芸員生活の中で、これまで呼ぶ側であった呼称が、私自身が呼ばれる対象となるのに戸惑いを感じながらの数か月でした。
  目の前の博物館・美術館の大きな工事について紹介します。当館の展示室や建物に付随する展示ケースや可動式展示ケースの什器類をはじめ講堂、講座室、バックヤードの収蔵庫や事務所室などには、多くの照明器具があります。館長室の約25㎡の部屋でも8灯の蛍光灯が設置されています。全館の延べ床面積23,721㎡に対して、私の部屋の面積を除した解に8灯を乗じたら、単純計算で7,590灯の照明具があることになります。ただ、展示室はさらに複雑な演出照明を行っていますので、それを上回る数量になります。開館して19年目の当館の展示資料や収蔵資料をよりよくみせる照明についてお話をします。
 
収蔵資料の「キーパー」としての学芸員
  19年前に開館した頃、照明器具はLEDの出始めの頃で、蛍光灯より光が直線的で、今日のように演色性もよくなく、光が青白く感じました。そのため、資料が本来のあるべき姿に見えるようにすることや、資料劣化を防ぐ紫外線を出さない拡散型の従来の蛍光灯やハロゲン灯を採用しました。一般的なものや特殊な蛍光灯をはじめ、発熱量や光量が強いハロゲン灯など展示を行う上で多種多様な照明具が使われています。特に、博物館常設展示の美術工芸の部門展示室では、紙や絹、苧麻、木綿の素材や、染料、顔料などの色材による多様な美術工芸品が展示されるため、その劣化を防ぐためにかなり弱い照度(100ルクス以下)設定を行っています。調光という光量を調整する機能も持たせることも必要です。そのため、室内が全般的に暗く、足元が暗いと来館者から不評を買うこともしばしばあります。明るく見やすくした方が展示としていいのは分かりますが、学芸員は文化財保護法や博物館法の見地から、博物館資料を次代へ確実に継承する措置を講じなければなりません。資料の適正な保存のあり方も考えないといけないです。時代を超えて収蔵資料を守ることから、資料の「キーパー(管理者)」としての役割は学芸員にとって重要です。展示公開と資料保存というジレンマと闘いながら学芸員たちは展示活動を行っていますので、ご理解をいただければ幸いです。
  博物館・美術館を維持管理することは、大きな経費の負担を伴います。その負担に見合う活動の実態が求められます。組織がいかに大きくても、そこに働く一人ひとりの活動が博物館・美術館という総体を支える骨であり、血や肉になり、場や機会をはじめその魅力や求心力を創出することなるものと信じています。
 
照明のLED工事化工事の実施
  昨年度末の段階で、令和8年度下半期はLED工事のために一部休室を予定していましたが、複雑な設計業務に時間を要し、今年度中に業者が決定しても、全国的な博物館等のLED需要や中東紛争の影響もあってか照明器具の発注から納品までに6か月程度を要することが判明しました。そのため、今年度中の工事着工は難しいことが分かったため、今年度末(令和9年3月)までは従来どおり開館することを本年7月末に決定し、下半期中止していた施設利用を再開することにいたしました。
県民の皆様には、混乱を招いたことを深くお詫び申し上げます。
  博物館・美術館の学芸員の学究活動は日常にあり、その活動の一部が展示公開で、企画展や特別展、コレクションギャラリーとして対外的な展覧会として紹介されます。そこには、学芸員の日々の資料収集保管活動や調査研究活動などの奮闘をはじめ、指定管理者の施設運営や管理の苦心があります。そして何よりも博物館・美術館の文化活動を愛し、期待する県民のご理解が不可欠であることはいうまでもありません。それらをなくして館の存立はありません。
 
開館20周年目のライトのヘビーなチェンジ
  来年度は、当館は開館20周年の大切な節目に年になりますが、ちょうどその節目に約1万灯の大小様々な従来の器具をLED照明に交換しなければなりません。従来の水銀入りの蛍光灯や高熱を発するハロゲン灯は、水銀使用の製造物の中止や省エネで持続性が高いLED照明に取って代わられ、製造が中止される方向にあります。そのための工事を1年近くかけて行うことになります。可能な限り、一部休室の期間を短縮する工夫をしたいと思いますが、実際に工事を実施してみないと見えない部分がありますので、当館ホームページで適宜情報の更新をしたいと考えています。
  当館は、戦後の歴史とともに歩み、戦争によって傷ついたモノや文化財のカケラの収集からコレクションが始まりました。県内外の方々のご寄贈やご寄託等によって、確実に収蔵資料を増やし、これまで建物の老朽化と収蔵スペースの狭隘のために改築を繰り返してきました。おかげさまで、令和8年3月31日現在、博物館で122,502点、美術館で5,114件(寄託資料除く)を数えるまで収蔵資料を増やすことができました。
  LED工事といっても、電球の入れ替え程度と思いがちですが、実は博物館・美術館ならではの特殊事情があります。博物館で12万点余、美術館では寄託資料含めて6千点の資料が収蔵庫に保管されています。これらの収蔵庫はカビやシミや害虫がつかないように年間を通して温度湿度を一定に保ち、安全に管理しています。もちろんですが、各収蔵庫にも照明器具が取り付けてあります。天井高5mの収蔵庫に、最大限に収納率を高めるため中二階のデッキを設けて、多くの棚が配架されています。棚や棚段単位で住所を付して、大量の資料が迷子にならないように管理しています。そこの天井とデッキ天井にも多くの照明器具が取り付けられています。その照明具や器具の撤去や新設の際には、工事に支障のない範囲で移動する必要があります。資料を損傷するリスクがあれば、資料を全て移動しないといけません。
  工事期間中は、収蔵庫単位で、収蔵資料を温度湿度が適正な環境に退避させないといけないです。そのため、博物館では3階の企画展示室や特別展示室が収蔵資料の一時的な保管スペースになります。また、美術館では1階の企画ギャラリーなどを利用せざるを得ません。加えて、美術館ではコレクションギャラリーの吊り下げ天井の耐震強化工事も行わないといけません。資料の移動には、館内といえども学芸員立会いの下、美術梱包を施して移動する必要があります。各収蔵庫の従来の照明をLEDに切り替えを行った後で、現状回復を行う必要があります。一部休室していても、学芸員は資料収集、保存管理、調査研究、教育普及活動等の通常の学芸業務を行いながら、収蔵資料の移動の立会いを行う必要があります。対外的には休んで見えても、内部では働きバチのように多忙な20周年を迎えることになり、学芸員はこの1年間忙殺されることを覚悟しないといけないと思っています。
  20周年の節目に、SDG‘sの考えに基づいて環境にやさしく、より一層輝く教育文化の光を放つことができる博物館・美術館づくりの1年にしたいものです。
県民のより一層のご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げます。

 
2026年9月
沖縄県立博物館・美術館
館  長  園 原 謙 
  
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