沖縄県立博物館・美術館では、離島県である沖縄県の地理的特徴を踏まえ、主に離島や特定の地域を対象として、学芸員が自然・歴史・民俗・考古・美術工芸など多分野にわたり調査・記録する「総合調査」を実施しています。
これまでの調査成果は「
総合調査報告書」としてまとめられており、展覧会や研究の基礎資料として活用されていますので、ぜひご覧ください。
直近の2019年度から2024年度にかけては、宮古諸島において総合調査を実施しました。その一環として、人類分野では多良間島に関する考古・人類学的調査を行いましたので、本コラムではその成果についてご紹介します。
なお、今回の調査にあたり、多良間村教育委員会、仲筋字会、塩川字会、琉球大学、福岡大学、関係者の皆様には大変お世話になりました。厚く御礼もうしあげます。
今回の調査は特別な許可を得て実施しています。保安林や自然公園、遺跡において、許可無く現状を変更することは禁止されていますので、十分注意してください。
多良間島の概要と今回の調査
多良間島は宮古諸島に属する低平な石灰岩島で、面積は約20㎢、人口は約1000名です。東方の宮古島(伊良部・下地島)までは約50~60km、西方の石垣島までは約40km隔たっています。この島では、約4000年前から人類が居住した痕跡が知られており、多良間添道(たらまそえどう)遺跡や西高嶺遺跡といった古代の遺跡も知られています。
多良間島の風景(八重山遠見展望台より)
石灰岩地質の低平な地形が広がっています。
(面積:約20㎢、人口:約1000人)
多良間島の地図
島北部には最大標高35m程度の丘陵地帯があり、集落はその南側に集中しています。今回は地図中の①~⑦の地点で調査を実施しました。
①コテ遺跡
②シュフディガー
③カーバルガー
④ ンニマガー
⑤フタツガ―
⑥シュガーガー
①コテ遺跡の調査
コテ遺跡は、島の北海岸の砂丘地に位置する遺跡で、2019年の表面調査によって畑地脇の露頭から海産貝類や焼石などを含む黒色砂層が確認され、放射性炭素年代測定(註)から2700~2400年前頃の遺跡(無土器文化期)であることがわかりました。
(註)放射性炭素(14C)年代測定
炭化物や貝・骨などの有機物に含まれる放射性炭素(14C)の割合と、その半減期(約5730年)を利用して、生物が死亡した年代を決める方法です。1950年を基点としてそこからの古さを示し、約5万年前ごろまでの年代を測定することができます。放射性炭素年代測定によって測定された年代値と実際の年代にはずれがあることが知られており、正しい年代を知るためには暦年較正(れきねんこうせい)を行う必要があります。
2019年6月の遺跡発見時の状況
黒色砂層中に焼けた石や貝類などの遺物が含まれています。
2024年2月の試掘調査のようす

コテ遺跡採集遺物
Aシレナシジミ(マングローブに生息するシジミの仲間で、現在多良間島には生息していません)
Bヒレジャコ製スクレイパー
Cリュウキュウサルボオ製貝製品(矢印部分に穿孔あり)
D石英(多良間島には分布していません)
E砂岩(多良間島には分布していません)
人骨発見時の状況
2025年2月には畑地脇の露頭から新たに人骨(脛骨)が採集されました。
発見された人骨は、放射性炭素年代測定の結果、中近世(875 ± 20 14C BP(PLD-56405):12~16世紀頃)のものであることがわかりました。考古学的にはグスク時代、歴史学的には古琉球の時代に相当します。
このことから、2026年2月に、改めてこの地点の発掘調査を行いました。
発掘地点の近景(2026年2月)
写真中の切り株の付近が人骨採集地点。
掘削調査のようす(2026年2月)
遺物(敲石・貝類・人骨)の出土状況(2026年2月)
掘りあげた土をフルイにかけて、細かな遺物も回収します。
発掘された人骨と石器、貝類など
いつ頃のものなのかはまだ不明ですが、今後の調査研究を通して明らかにしていきたいと考えています。

お昼ごはんのそば。おいしかったです!
②シュフディガーの調査
シュフディガーは、島の北部砂丘地内の林の中に位置する洞窟で、2024年2月の踏査によって洞床の砂層の上部から人骨や貝類が確認されました。この際に採取された炭化物の放射性炭素年代測定から、約200年前(170 ± 15 14C BP(PLD-53454))という年代値が得られました。
この年代は明和津波(註)の年代(1771 年)を示している可能性があります。
(註)明和津波(めいわつなみ)
1771年4月24日(明和8年3月10日)午前8時頃に石垣島近海で発生した地震に伴う大津波で、八重山諸島を中心に、多良間島や宮古島にも甚大な被害を及ぼし、死者・行方不明者は住民の約3分の1にのぼったといわれています。
シュフディガーの遺物産出状況(2024年2月)
Aシャコガイ(シラナミ類)
B人骨(寛骨)
C人骨(上腕骨)
ヤラブ(テリハボク)の林の中に開口するシュフディガーの洞口(2026年2月)。
洞内での調査のようす(2026年2月)。
狭いので作業も大変です。
洞床の砂層を掘り下げていくと、点々と人骨がみつかりました(矢印)。
なぜこんな場所に人骨が入り込んだのでしょうか・・・?
堆積層の下部からは下顎骨もみつかりました!
歯が残っていますね。。。
シュフディの洞窟から出土した人骨と貝類。
比較的まとまった数の骨が見つかりました。
これらについても、いつ頃のものなのかはまだ不明ですが、
ひきつづき調査研究を継続していく予定です。
主任学芸員 山崎真治