1.「標本」とは何でしょうか?
昆虫の乾燥標本、保存液に浸ったヘビやカエルなど、「標本」という言葉を聞くと、人それぞれに違ったイメージが浮かぶかもしれません。博物館で「標本」と呼んでいる資料は多岐にわたります。剥製や骨格、植物の押し葉標本まで様々です。とにかく、生きものの体を腐らないように処理したものと考えていただければ差し支えありません。本展、「いのちのカタチ展―好奇心の標本箱―」は、そんな標本たちを魅力たっぷりに展示して、そのカタチをじっくり楽しんでいただき、標本という存在を身近に感じていただくことを目的にしました。
図1 展示の様子(貝殻標本)
2.何が展示されている?
本展で展示するのは、すべて沖縄県立博物館・美術館(以下、「当館」)が所蔵する生物標本です。当館の自然史収蔵庫には、約5万点におよぶ生物標本が収蔵されていますが、その大部分が琉球列島にくらす生きものたちであり、その時、その場所の自然を記録するために採集された貴重なコレクションです。中には絶滅が心配される希少種、新種を記載する際に参照されたタイプ標本(模式標本)、100年以上も前に採集された標本など、普段は目にすることのない貴重な標本も含まれます。
図2 展示の様子(約100年前に採集された植物標本)
3.「標本」は未知なる世界への扉
私は、当館に着任して以来、これらの標本たちと対峙してきましたが、標本たちを眺めていると、奇妙な形や美しい模様、不思議な構造など、いつも新しい発見があり、胸がおどります。そして、その意味を科学の視点でとらえると、生きものの行動や生態、進化の軌跡にまで想像が広がり、標本という存在の尊さや、標本を収集・管理してきた研究者や先輩学芸員たちの努力に頭が下がります。しかし、ふと我に返ると、「標本」というものをそんな感覚で見ているのは博物館関係者や自然史科学への関心が高い人に限られていることに気づきます。おそらく、世の中の大部分の人にとって、「標本」は遠い存在であり、「標本とは何か」ということすら十分に理解されていないのが現状だと感じています。

図3 展示の様子(植物標本)
4.感じてほしい、「標本」のすばらしさ
そこで本展では、「標本」や「自然史科学」と接点の無い人を念頭に、「美しい写真」や厳選した「最小限の言葉」で、その魅力を最大限引き出せるよう工夫をこらしました。科学的な理解を最優先とはせず、自然が作りだす造形美を楽しみながら、自由な視点で発見を楽しんでいただけるよう趣向を凝らしました。本展をご覧いただければ、たとえ小さな標本でも、その中に自然の偉大さを実感していただけるはずです。
写真4 展示の様子(全景)
ぜひ本展に足をお運びいただき、「標本」の世界を味わってください。その中で、あなただけの「気づき」を見つけてください。そして、その「気づき」を誰かと分かち合い、さらなる探求へのきっかけとしていただければ幸いです。
◎展覧会情報
沖縄県立博物館・美術館 令和7年度博物館企画展
「いのちのカタチ展―好奇心の標本箱―」
[会場]
沖縄県立博物館・美術館 3階 企画展示室・特別展示室1
[開催期間]
令和7年12月23日(火)~令和8年2月23日(月)
休館日は毎週月曜日、12/29(月)-1/3(土)、1/13(火) ※1/12(月)、2/23(月)は開館
[開催時間]
9:00~18:00
金曜日、土曜日は20:00まで
主任学芸員 菊川 章