2024年夏のおきみゅーの賑わいも終わり、ミーニシ(新北風)の吹き出しとともに、おきみゅーも少しだけ落ち着きが感じられるようになってきました。 博物館特別展示室・企画展示室では、
芭蕉布展~績(う)まれる苧(ウー)から生まれる思(ウム)い~が10月1日から12月1日まで開催中です。ぜひご観覧下さい。
さて今日はおきみゅーの展示物の中でもおそらく一番の人気者、エントランスホールに展示中のカムイサウルス の骨格レプリカが、おきみゅーにやってきた裏側をご紹介します。
昨年2023年11月、それは突然やってきました。「カムイサウルス・ジャポニクス骨格レプリカの受け入れ先を沖縄県内で探している。」という連絡があったのです。 博物館資料の受け入れには、学芸員による収集、寄贈、購入、寄託のパターンがあり、今回は寄贈です。寄贈者は、北海道札幌市在住の植田英隆氏。趣意書には、世界平和と沖縄県への慰霊・鎮魂の思いとともに、経済振興、観光振興で元気にしたいと記載があります。当館にとって、恐竜骨格レプリカは、常設展示にこそありませんが、40年以上続く離島等で開催している移動展では最も人気のある展示資料です。既存の収蔵資料は、1980年の恐竜展の際に購入したもので、老朽化や組み立て分解の繰り返しにより劣化が進んでいます。そのため、これまで他館の展示資料のお下がりの購入や、クラウドファンディングを検討するなど、新規導入を何度か試みてきましたが、収蔵までに至らず、新しい恐竜骨格レプリカの収蔵は悲願でした。
そこで突然降って湧いた本件は奇跡的で、すぐに受け入れに向けた調整に入りました。最初に館内の収蔵場所、展示場所・期間等、受け入れ体制の整備を行うとともに、寄贈者との諸条件の擦り合わせをし、正式に当館での受け入れが決まったのは12月末でした。その後、感謝状贈呈式の日程や輸送スケジュールの調整を行いました。直前になり、1点失念していた事を思い出しました。燻蒸です。レプリカそのものは樹脂製であり、文化財害虫による食害の心配はありません。しかし、レプリカを運搬してきた箱は木製であり、今後、館内に収蔵・保管するにあたり、総合博物館の様々な資料を収蔵する当館にとって、木製のクレートと資料の燻蒸は必須です。急遽、燻蒸の依頼をしました。
2024年2月13日 燻蒸前の状態確認の様子
受け入れセレモニーの日程を決定し、そこから逆算して、本州の港を出発したのが2024年2月8日、那覇新港に着いたのは2月13日でした。その後、数日間の燻蒸を経て当館に到着したのは、セレモニーに前日の2月19日の朝でした。
2024年2月19日 当館到着時の様子
2024年2月19日 組立作業
午前中に組み立て、午後はセレモニーの準備、寄贈者並びに関係者をお迎えして、2月20日のセレモニー当日を迎えました。セレモニーは、玉城知事による感謝状贈呈式、その後の記者発表の流れで進めました。
2024年2月20日 感謝状贈呈式
セレモニーが無事終了し、植田氏が涙ながらにコメントされる様子を見た時には、寄贈を受けて良かったと心から嬉しく感じた瞬間でした。セレモニーの後、関係者の一人、むかわ町の竹中町長からは、本資料は寂しがりやで1日3回声かけしてほしいとお聞きしました。寄贈者や関係者の思いとともに、本資料が沖縄県民、来館者に末永く愛される存在となることを祈念します。
本資料の寄贈及び展示にあたって、植田様へあらためて御礼を申し上げるとともに、受け入れにあたっては、むかわ町、むかわ地域商社M Dino、むかわ町立穂別博物館、ゴビサポート、琉球物流、沖縄サニタリー等、多くの関係者の皆様のご尽力があったことを合わせて紹介し感謝の意を表します。
カムイサウルス が当館にやってきてから、早くも9ヶ月が過ぎました。毎日、カムイサウルス を多くの来館者が観覧し、その前で記念撮影されています。
2024年7月21日 カムイサウルス前の来館者の様子
2024年8月2日 カムイサウルス前の来館者の様子
まだカムイサウルス をご覧になっていない方は、ぜひ当館に足を運んでいただけたら幸いです。なお、カムイサウルスの見どころや、今後の活用等の計画等については、本資料の展示を行った地質担当新山学芸員の今後のコラムに掲載予定ですのでお楽しみに!
博物館班長 宇佐美賢