1. 【国際博物館の日2021】沖縄1万年の人口史

【国際博物館の日2021】沖縄1万年の人口史

最終更新日:2021.05.13

 現在地球上には70億を超える人類が分布しています。世界人口はここ数百年で加速度的に増加してきました。沖縄の場合も同様に、明治・大正期には40~60万だった人口が、わずか100年間で2~3倍ほど増加したことになります(図1)。一方、琉球王国時代の17世紀前葉には10万、18世紀前葉には18万ほどで、人口の増加はずっとゆるやかでした。17世紀以前の文献記録はありませんが、100年あたりの人口増加率を10%程度(年率0.1%)と仮定すると、12世紀に沖縄で農業が始まった頃の人口は4万~6万前後と推定できます。
 それ以前の先史時代の人口については手がかりがありません。そこで、各時期の遺跡数を集計し、100年あたりの遺跡数を求めてみたものが図2です。全体として遺跡数は非常に少ないのですが、徐々に増加し、紀元前1000年頃にひとつのピークを迎えます。ところが、その直後に10分の一ほどに落ち込んだあと、再び漸増し、12世紀(紀元後1100年代)頃には一気に5倍にはねあがります。最後の増加は農耕の開始によるものと考えられ、穀物生産が人口増加に好条件をもたらしたことがわかります。
 紀元前500年頃の急激な減少の理由はよくわかっていません。もしかすると、人口増加や島外との交流の活発化に伴う疫病の蔓延のような破局的事件があったのかもしれません。現代の沖縄も人口密度が高く、今般の新型コロナに見るように疫病には弱い社会構造となっています。ひとりひとりの意識ある行動が求められています。






各時期の遺跡数の算出については以下の文献に掲載されたデータを参考にしました。
(今回は、現在発見されている遺跡数のみを扱い、未発見の潜在的な遺跡数は評価していません。遺跡数を厳密に算出することは難しいため、不正確な部分も含まれていることと思いますが、ご容赦ください。)
・新里貴之・高宮広土編2014『琉球列島の土器・石器・貝製品・骨製品文化』六一書房
・新里亮人2018『琉球国成立前夜の考古学』同成社
・高宮広土・伊藤慎二編2011『先史・原史時代の琉球列島 ヒトと景観』六一書房
・友寄英一郎1971『先史沖縄の人口』『古代文化』23-9・10
・宮城弘樹2000「貝塚時代後期土器の研究(Ⅱ)-後期遺跡の集成-」『南島考古』19
 

人類担当 主任学芸員 山崎真治

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