琉球王国文化遺産集積・再興事業では、近代化や戦争で失った文化財と、文化財を製作する手わざを、科学分析等の最新研究による情報をもとに模造復元しています。復元した65件の文化財の中には、写真しか残っていないものもあります。それらを復元するためには、類似資料を調査し、多くのデータから根拠をもって製作することが求められました。失われたものを全く同じように製作することは大変難しい作業ですが、資料を「収集保存」し、「調査研究」する博物館の役割があるからこそ、実現したといえます。そして、復元した文化財は積極的に展示公開することで、沖縄県の文化と技術力の高さを広く発信することを目指しています。ここには博物館の「展示公開」の役割が活かされています。そして「展示公開」と同時に重要なことが資料の「保存」です。写真は、紅型衣裳(びんがた いしょう)(模造復元品)を展示した後にクリーニングする様子です。衣裳の表面をスポンジでなでると、細かい汚れやホコリなどを除去することができます。一見、汚れていないように見えても、肉眼では見えない汚れが付着していることがあり、そのままにすると、シミができたり生地が劣化することに繋がってしまいます。クリーニングは時間がかかり、地道な作業ですが、これも文化財を守るための大切な仕事です。現代の職人と研究者らの協働によって創出された模造復元品は、21世紀沖縄の文化財として博物館で守られて、未来へ伝えられていきます。
紅型衣裳クリーニングの様子
関連情報
展示:修理と復元でよみがえる! ―琉球の美を未来へ伝えるために―
会場:博物館常設展 美術工芸部門展示室
会期:令和3年2月9日(火)~5月30日(日)
琉球王国文化遺産集積・再興事業
について、詳しくは
こちら!→
https://okimu.jp/tewaza/
美術工芸担当 学芸員 篠原あかね