1. 「2018新北市考古生活節」参加記

「2018新北市考古生活節」参加記

最終更新日:2019.04.09

 博物館の活動にはいろいろな側面がありますが、今回は2018年4月28・29日に開催された台湾新北市立十三行(じゅうさんぎょう)博物館の「新北市考古生活節」のイベントについてご紹介しましょう。このイベントは、毎年テーマを決めて(2018年度は「装飾美術と考古」)、台湾および国内外各地(韓国・日本)の博物館から関係者が参加し、さまざまな教育普及関係イベントを開催するもので、ワークショップの見本市のような性格も持っています。開会式には新北市長や議員も列席し、各館のブースが50以上も設けられ、飲食関係の出店も並ぶ、まさに一大フェスティバルです。2018年度は2日間で2万人もの来場者があったということで、大変盛況なイベントでした。当館からは篠原あかね(美術工芸)と筆者(人類)が招聘を受けて参加しました。
 十三行博物館は、約2千年~1千年前の台湾の鉄器文化を代表する十三行遺跡に建つフィールドミュージアムで、台湾北部では最大の考古学博物館です。スタッフは20名ほどですが、遺跡の調査研究や出土品の保管は総統府直属の中央研究院が担当しており、十三行博物館では調査研究担当の職員の配置は2名ほどということでした。このため、展示活動や教育普及が館の活動の中心となっています。ボランティア活動も活発で、学校対応や外国人観光客への対応をボランティアの方々が担当していました。特に、通訳の王さんには、中国語に疎い日本人にとても親切にしていただき、大変お世話になりました。
 「考古生活節」に先だって、26日には「国際考古学フォーラム」が開催され、イギリスのヨーク市にあるバイキング博物館の取り組みや、ニュージーランドのマオリ文化に関する普及活動、台湾の先史・歴史文化をテーマとした講演が行われました。いずれも興味深い内容で、広い視野から博物館活動を考える良い機会となるものでした。
 28・29日のフェスティバルでは、市長臨席の開会式の後、各館ごとのブースでワークショップが催されました。10時から1時間ごとに15時まで、各回ごとに整理券を配布し、参加者を集める方式でしたが、来場者が多く、ネタ切れで早々に終了するブースもありました。当館からは、夏休み学芸員教室で実施している「貝のやじりを作ろう」を出展しました。
 この他にも、日本からは宮崎県立西都原考古博物館、兵庫県立考古博物館、佐賀県教育庁(吉野ケ里公園)、熊本県立装飾古墳館などから参加があり、個性的なワークショップが催されました。通訳や作業補助として、アルバイトスタッフや学生ボランティア(学校の単位の一環としてボランティア活動が行われているということであった)が配置され、スムーズに活動を行うことができました。
 博物館に勤めていても、なかなか他館のワークショップを目にする機会は少ないものですが、今回のイベントでは多種多様なワークショップを見学することができ、大変勉強になりました。「新北市考古生活節」では、直接的には考古学と関係しないのではないかと思われる、健康法に関するものや、新たに開発した飲食品に関する工業高校の出し物などもあり、幅広い裾野を集めていることがうかがえました。いずれにせよ、このような大規模なイベントの開催にあたっては、運営側の負担も大きいのではないかと思いますが、参加館や来場者の満足度も大きいようです。特に文化を通じて国際交流を積極的に推進している点には見習うべき部分も多いと思います。筆者が見聞したところでは、大阪府立弥生文化博物館や、兵庫県立考古博物館などでは、定期的にこうしたフェスティバルが開催されているということで、さまざまな館が連携してイベントを開催している事例もあるようです。以上、簡単ではありますが、「2018新北市考古生活節」の紹介を終えたいと思います。
(主任学芸員 山崎真治)


新北市立十三行博物館の外観。左の方形の部分が山、右の曲線的な部分が海(砂丘)をあらわしており、その中間の塔が遺跡をあらわしています。傾いた塔には、破壊された遺跡はもとには戻らないというメッセージが込められています。

テレビ局の取材を受ける筆者(手前)。ボランティアの王さんが通訳してくださいました。
王さんは85歳になるということですが、大変お元気です。


開会式の様子。写真中央は新北市長。

「貝のやじりを作ろう」のワークショップの実施状況。左端が通訳の陳さん。


会場の様子。ずらりと各館のブースが並ぶ。

 
 

主任学芸員 山崎真治

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