1. フィールドツアーでのボヤキ② ―現地説明の苦悩と喜び―

フィールドツアーでのボヤキ② ―現地説明の苦悩と喜び―

最終更新日:2025.08.12

   (前回からの続き)

5.参加者からのご質問

  •  色々な場所を現地で見ることで新たな発見があり、それと共に新たな疑問が出てきます。それは実際に見て学ぶことはリアルな体験であるため、座学で湧き出てくる疑問とは全く質が異なります(写真1)。よって普段はあまり質問されない方でも、現地でどうしても知りたいという気持ちに自然となり、思い切って質問されることも多々、あります。
  • 写真1 船越集落でのフィールドツアー(沖縄県立玉城青少年の家提供)

     実際にフィールドツアーでは多くの方から質問を受けますが中には長時間にわたって質問の応答が続いてしまうこともあります。個人的にはフィールドツアーで知的欲求が高まったと感じ取り、心中ではとても嬉しく思っています。が、あまりにも長時間の質問が続くと他の方も質問したいのに遠慮してそれができない状況となってしまうことと、進行に支障が出てしまう場合があります(写真2)。
     長くなりそうな質問の場合はフィールドツアー終了後に改めて質問していただくと大変助かります。
  • 写真2 島添大里グスクでのフィールドツアー

6.どこが主催なのかに注意

 申込期限を過ぎてからフィールドツアーが開催されるのを知ったというご意見を多く賜ります。このようなご意見は沖縄県立博物館・美術館が主催していないフィールドツアーであることが多いように思われます。
 沖縄県立博物館・美術館が主催するフィールドツアー以外にも他機関が主催で沖縄県立博物館・美術館が後援に入る形のフィールドツアーもあります。昨年度は環境省慶良間自然保護官事務所や沖縄県立玉城村青少年自然の家、与論町教育委員会などが主催するフィールドツアーがありました。それぞれの主催者が古い集落やグスクを対象にしたフィールドツアーを計画しました。
  沖縄県立博物館・美術館主催以外のフィールドツアーに参加する場合はそれぞれの機関、施設のホームページ上で告知しております。また、直接お電話での問い合わせもできますので、くまなく情報を収集すれば参加できる確率は高まります。なお、この学芸員コラム内でもできる限り他機関主催のフィールドツアーを告知していきたいと思っています。

7.それでもやっぱり参加したい

 現地で得られる興味はやはり何物にも代えがたいと言えます。集落のフィールドワークでは集落内に存在している拝所や井戸といった史跡を見ることで集落の成り立ちや沖縄の歴史そのものをリアルに感じ取りことができます(写真3)。

写真3 冨里集落での井戸見学(沖縄県立玉城青少年の家提供)

 過去の学芸員コラムにおいて現地を見て歩くことの大切さについて少しだけ触れておりますので、参考までにURLを下に挙げておきます。

必見!グスクの石積み⑥(2024年9月12日)
http://okimu.jp/museum/column/1726113364/
 
 ただ、参加を希望しても状況によっては参加希望者が多数で抽選になってしまい、結果的に外れてしまうといったことも割とあります。この場合、意気消沈してしまうのは仕方のないことですが、これはめぐり合わせであると割り切って次の機会をうかがうことが賢明です。諦めずに粘り強く応募し続けることが抽選に当たる最大のコツであるといえるでしょう。
 そして、運良くフィールドツアーへの参加が叶ったのであれば、貴重な時間を余すところなく堪能する気持ちで当日を迎えることをお薦めします。あわせて訪れた場所に対しての興味や関心だけでなく、その場所への敬意を払うこともお忘れなく。
 

8.地元のおもてなし

 フィールドツアーを迎え入れる側にとっては様々な事前準備があるので、とても大変です。一方で参加者の充実した姿を見るとその苦労が一挙に報われます。それともう一つ嬉しいことは、フィールドツアーを行った地元の方々が地域に誇りを持ってもらえる点にあります。
 とくに集落内にある拝所は普段はあまり人が立ち入ることがないので下草が繁茂している状態が常です。しかし、このフィールドツアーに向けて地元有志の方々が事前に清掃して、見学しやすくなっていることが多々あります(写真4)。おそらく時間をかけて一生懸命に草刈りをされたことが想像されることから、フィールドツアーの参加者に対する地元の方々のおもてなしであると勝手に解釈しています。

写真4 下草刈り後の糸数集落の殿内屋

 このように多くの地元外の方が普段住んでいる自身の集落を見てまわるという機会はほぼ無いことから、良い印象を持って帰ってもらいたいという地元の方々の気持ちがそこにあると思われます。その気持ちの一つに地域の小さな拝所を今でも大切に護っているということに現れ出ているものと思われます(写真5)。このことは地域にとって地元に対する愛着と地域への誇りへと繋がっていくものであると願うばかりです。

写真5 綺麗に清掃された津波古集落の大松金殿

9.最後に

 今年の12月6日に第一尚氏王統にまつわる史跡をめぐるフィールドツアーを密かに計画しております。これは第一尚氏王統成立600年を記念して、美ら島財団が主催で実施するフィールドツアーになります。
 このフィールドツアーの詳細については当館ホームページでも近いうちに告知いたしますので、ご注視ください。

写真6 与論島で行ったフィールドツアー(与論町教育委員会提供)

(おわり)
                                  (沖縄県立博物館・美術館主任学芸員 山本正昭)

◎注目のイベント情報「大世通宝」「世高通宝」銭づくり体験

 沖縄県立博物館友の会主催
「大世通宝」「世高通宝」銭づくり体験
 9月2日から始まるエントランス展示『尚巴志王統の系譜』にあわせての関連催事第2弾の告知です。1454年、第6代国王に即位した尚泰久王が命じてつくらせた「大世通宝」の鋳造体験を9月7日に行います。主に低融合金を使って鋳造し、ヤスリを使って削り磨く体験になります。
参加方法などの詳細は以下の通りになります。
①日時:令和7年9月7日(日) 午前の部10:00~12:00、午後の部14:00~16:00
②場所:沖縄県立博物館・美術館実習室
③参加費:お一人500円(材料費、道具代込み)
④参加定員:各回12名
⑤参加方法:事前申し込み(8月20日から申し込み開始、申し込み多数の場合は抽選)
⑥参加連絡先:098-868-2722 沖縄県立博物館友の会事務局     
⑦年齢制限:なし
 

 

博物館班 山本正昭

シェアしてみゅー

TOP