はじめに
沖縄県立博物館・美術館では展示以外に講座や展示解説会、バックヤードツアー、ワークショップなど多岐にわたってイベントを実施しています(写真1)。これはイベントを実施することでより深く当館の展示資料を理解していただくこと、そして展示だけでは伝えきれないことを補うことが主な理由となっています。

写真1 令和7年度7月文化講座の様子
様々なイベントの中でも最も頭を悩ますのがフィールドツアーになります。今回は過去に行ったフィールドツアーでの苦悩をボヤいていきます。
1.最も頭を悩ます当日の天気
- 今年に入って自身が関わったフィールドツアーは3回ありましたが、全て雨天のために中止となってしまいました。3回連続での雨天中止は初めての経験だったことから、2025年は水難の相が強く出ていると思わざるを得ません。
フィールドツアーでは事前の準備を入念に行ったところで、当日が悪天候になってしまうと全ての準備が無に帰すこととなります(写真2)。そのことは頭では理解していながらも、やはり中止となってしまうと気持ち的にかなり落ち込んでしまいます。
写真2 事前下見の様子(前島集落近くの古墓)
参加申し込みされた方から大雨でもない限り、実施してほしいというご要望も頂きますが、巡り見る場所の足場が悪いところも少なからずあるため、涙を飲んで中止の判断をします。また、思っている以上に雨天時は足元が滑ることからケガの心配も出てきます。ですので、参加者の安全確保を踏まえての中止の判断になっておりますので、このような事態になった時はご理解を賜ればと思っております。
2.参加者人数を限定している理由
次にフィールドツアーでは人数が制限されます。それは狭い場所を通ることや、説明するスペースが確保できない、そして参加者が停める駐車スペースの問題などがあります。
主に集落めぐりをフィールドツアーとして行っている経験上、静かな集落で大人数の参加者を引き連れて歩き回ると、騒々しくなり住民の方々に迷惑がかかることが容易に想像されることから、20名前後の参加人数がもっとも適切なツアー規模であると感じました。また、御嶽や殿といった拝所も狭いところが多いことから、そのような場所はいくつかのグループに分けて案内したこともあります(写真3)。
写真3 船越集落のフィールドツアーの様子
集落めぐりのイベントは毎回40~50名もの参加希望者があり、とても嬉しく思う反面、抽選により外れて参加できない方が半数以上いると思うと、とても申し訳ない気持ちになります。
参加希望者からは「どうやったら当選するの?」とよく聞かれますが、こればかりは厳正に抽選しているため「運」であるとしか答えることができません。
3.ご高齢の参加者へ
集落の歴史を訪ね歩くフィールドツアーでは60代より上の世代の方々が参加者全体約7割を占めています。毎回ですが80代の方が参加申し込みされていることも珍しくありません。ご高齢になられても知的好奇心が旺盛であることはとても素晴らしいことであり、頭が下がる思いであります。しかし、半日歩き回る体調や体力が伴っていないのを押して参加申し込みされる方もおられます。
この場合、ご自身の判断だけでなくご家族やご友人と相談した上で参加申し込みしていただければと思っております。知的好奇心がくすぐられて勢いで参加申し込みする気持ちも分かりますが、今一度気持ちを落ち着かせて参加申し込みする、しないの判断をしていただければと思います。
4.春、秋のフィールドツアーでも油断大敵
沖縄県は全国他県と比べても最も温暖な気候になります。年間平均気温が22~23℃と温かく、亜熱帯気候であることからも夏のリゾート地として多くの観光客が国内外から来県します。しかし、夏場は紫外線が強く日中に歩きまわることがかなり厳しいことから、フィールドツアーには不向きな季節になります。また、5月中頃から6月にかけては梅雨の時期であり湿度が高いことから日中に歩きまわるにも相当に体力を削ることになります。9月から10月にかけては残暑が厳しいのに加えて、この時期には台風が琉球列島に接近することからも、この時期はフィールドツアーを行うには適していません。 よって、11月から4月にかけて6ヶ月に実施時期は限られてくることになります。
悪条件下での開催は、終わってみれば疲労感だけが残ることになり、あまり話の内容が残らないことはよくあることです。反対に、心に余裕を持って解説を聞くことで内容がより理解できること、解説する側にとっても快適に動き回れることで滞りなく説明できることでお互いにとても充実したフィールドツアーになります(写真4)。
写真4 佐敷津波古でのフィールドツアー
(次回へ続く)
(沖縄県立博物館・美術館主任学芸員 山本正昭)
◎イベント情報 エントランス展示『尚巴志王統の系譜』展示解説会
9月2日から行われるエントランス展示『尚巴志王統の系譜』にあわせて関連催事を行います。
その第1弾として『尚巴志王統の系譜』の展示解説会を以下の日時で行います。当日受付、参加無料です。第一尚氏王統の歴史や琉球王国の成り立ちについて興味ある方はぜひ、ご参加ください。
日時:令和7年9月6日(土) 午前の部 10:00~11:00 午後の部 14:00~15:00
参加費:無料
参加定員:15名
参加方法:当館エントランスにて当日受付
解説員:山本正昭(当館学芸員)
◆7月学芸員講座「第一尚氏王統期のグスク」動画公開
令和7年7月12日に開催されました7月学芸員講座「第一尚氏王統期のグスク」がyoutube動画にて公開されました。『おきみゅーちゃんねる』にて公開されました。ご興味のある方は以下からぜひご覧ください。
博物館班 山本正昭