最終更新日:2023.02.02
去る1月13日から15日にかけて渡嘉敷村において『第13回沖縄県立博物館・美術館移動展in渡嘉敷島』が開催されました(写真1、2)。
毎年この時期に沖縄県内の離島地域において3日間の期間限定で当館の所蔵資料を持ち出して展示する移動展を行っていましたが、昨年と一昨年は新型コロナが蔓延したため、開催を見送っていました。そして今回、実に3年ぶりに移動展を渡嘉敷島にて開催することができました。ようやく開催できたこの移動展について少し触れていきたいと思います。
写真1.会場となった渡嘉敷村中央公民館
写真2.開会式の様子
渡嘉敷島へ行くには那覇港から定期船が出港しており、わずか70分で到着します。島の人口は令和4年現在で700人にも満たず、島内の多くは山林となっている小さな島になります。港からほど近い場所に村役場があり、その向かいに今回の移動展会場となった渡嘉敷村中央公民館があります。この公民館フロアのほぼ全面を使って沖縄県立博物館・美術館が所蔵している資料の展示を3日間にわたって実施しました(写真3、4)。
『第13回沖縄県立博物館・美術館移動展in渡嘉敷島』開催に合わせて初日には開会式を行い、その後に展示解説会もあわせて行いました(写真5)。加えて、初日の夜には田名真之館長による歴史講座「琉球王国時代の慶良間・渡嘉敷」がリモートで行われ、多くの方々が参加されました。
初日を無事に迎えたことで、ようやく開催できたことの安堵と渡嘉敷島在住の方々が目を輝かせて展示物を見ている姿を目の当たりにして、移動展が無事に開催できた喜びがいつも以上に沸き上がりました。
写真3.公民館内での展示の様子
写真4.公民館内での展示の様子
写真5.開会式後に実施した展示解説会の様子
移動展2日目は美術館ワークショップ「身近な植物で筆を作って文字や絵を描いてみよう!!」(写真6)や美ら島財団ワークショップ「かんたん化石のレプリカづくり」(写真7)そして、博物館ワークショップ「渡嘉敷村の遺跡の味」を開催しました。とくに最後に挙げたワークショップでは渡嘉敷村漁業協同組合の職員がご同行していただき、多くのご教示を得ることができました。おかげさまでたくさんの貝を採集することができました(写真8)。移動展3日目には採れたこれらの貝から出汁を取って、参加者全員がその味を堪能しました。とても美味だったことから大成功であったことは言うまでもありません。
そして同日の午前中には博物館フィールドツアー「石ころと地形、遺跡から紐解く島の成り立ちと人間生活」を実施しました。こちらも参加者が渡嘉敷島の地質や地形、そしてそれらを利用してきた人々の歴史について、実際に生の景色を見て現物を触れる学びの体験となりました(写真9)。
これらのイベントは当日に何が起きるか分からないため、地元の方々からの協力無しで成功することはできません。今回においてもこれらのイベントが開催できた背景には、事前の準備に島の方々が参加していただいたことや、当日のスタッフに加わって頂いたことなど、多くの島の人々の協力があったことを強く感じました。
具体的に渡嘉敷島在住の方々からどのようなご協力を頂いたかを逐一、書き連ねるとかなり長くなるのでこのコラムでは割愛します。ここではなぜ島の方々が協力的であったのか、移動展の開催を通しての推察を最後に少し触れていきたいと思います。
とても強く感じたことは、今回の移動展を通して自分たちも島の参加者として楽しもうとする姿勢を多くの方々から見て取ることができました。外から来訪した博物館のイベントを単に傍観する立場ではなく、イベントを盛り上げる参加者の一人として加わろうとする意欲が、協力していただいた大きな動機であると感じました。
渡嘉敷島は島の面積が少ない上に、決して人口の多い島ではありません。皆で助け合って生活していくことが生きていく上での基盤になっていることが自然と皆で楽しもうという姿勢へと繋がっていってるように思えました(写真10)。
このような島の心根があるかぎり、渡嘉敷島の未来は明るいものであり、また遠い将来に移動展を再び渡嘉敷島で開催するその時まで、このような想いを島の人々が持ち続けていることを私は信じて止みません。
写真10 島の歴史と成り立ちを説明する博物館フィールドツアー
主任学芸員 山本正昭