当館の常設展示には約2万年前の旧石器時代人、港川人1号の骨格に基づく全身復元模型があります(写真1)。この復元模型にはさまざまな研究成果が反映されています。展示ケース内左側の2014年製作版では、港川人の骨の再検討の結果明らかになった新しい知見やサキタリ洞遺跡の調査によって初めて判明した港川人の時代の食糧や貝製装飾品が再現されています。
そして、何と言っても、顔です。2万年以上前に生きた人の顔を実際にある骨から推定し復元できるなんて、こんな場所は日本の中で、いや東アジアの中でも沖縄しかありません!これは、沖縄にとって私は非常に重要なポイントだと思っています。
こんな古人骨研究のメッカである沖縄に就職して早3年。私も、古人骨から歴史の主人公の姿をよみがえらせてみたい気持ちがふつふつと湧き上がってきました。実際に自分が発掘した資料を対象とするのがベストですが、まずは当館の人類部門がはじまって初めて発掘した保存良好な約2,500年前の武芸洞人の顔の復元にチャレンジすることにしました(写真2)。
ヒトの頭骨からは年齢や性別を推定できるだけでなく、成長時の健康状態を読み取ることもできます。さらに急速に進歩した古代DNA研究によって、肌や目の色、髪質といった骨の形のみからでは明らかにし得なかった驚くような新しい情報も近年では復元可能となってきました。
こうした最新の科学的知見を盛り込んで、武芸洞人の姿を今秋開催の「海とジュゴンと貝塚人」展でお披露目しようと準備を進めています。当館の人類部門展示の新しい主人公となる武芸洞人の姿にぜひご期待ください!
写真1 常設展示の港川人復元模型
写真2 武芸洞人の頭骨
人類担当 学芸員 澤浦亮平
人類担当 学芸員 澤浦亮平