昨年、12月21日にグスク展関連催事『形から見たグスクの原点を探る』と題してシンポジウムを実施しました。予想を上回る250名もの聴衆が詰めかけたことで、改めてグスクに対する関心が高いことを感じ取ることができました。今年、12月に『琉球王国のグスク及び関連遺産群』が世界遺産に登録されてちょうど20年が経過することになりますが、なぜ世界からグスクが歴史遺産として高い評価を受けているのかについて、普段から考えることはあまり無いと思います。しかし、世界遺産として登録されているという事実は人類にとって後世へ残すべき遺産として、ユネスコから認められたことを意味しています。ですので、その認識をさらに深めていく必要があるとおきみゅーの1学芸員として強く感じておりました。そのような動機付けで、先のシンポジウムを開催した次第であります。
このシンポジウムでは4名の報告者によって日本本土、朝鮮半島、中国大陸沿岸部といった東アジア各地域の城郭について触れていき、改9めてグスクとはどのような遺跡であるのかについて討論を行っていきました。様々な意見交換が行われたのですが、その中でも、極めて短期間に城郭は発達していくという共通項が東アジアの城郭の中で見出すことができたことは個人的には非常に大きな収穫でした。琉球列島のグスクは概ね14世紀後半から15世紀前半の時期にほぼ収まってきます。その100年弱という期間で小規模なグスクから大規模なグスク、そして単純な平面構造から複雑な平面構造へと変容していったことが考えられています。日本本土における中世城郭から近世城郭への変化は約50年間で飛躍的に変化していきますし、古代山城についても急速に西日本各地に展開していったことが解っています。
このように東アジアという視点でグスクを見ると、これまでにあまり気が付かなかった特徴や他の城郭との共通性を知ることができます。このシンポジウムで得られた新たな知見を更に深めていくために、法政大学沖縄文化研究所主催のシンポジウム『グスクとしての首里城―東アジアの視点から―』を開催し、再び東アジアという視点からグスクを見ていくと共に、首里城を一つのキーワードとして取り上げて議論を深めていくことになりました。このシンポジウムはリモートによる開催で令和2年11月27日からyoutube上で公開されますので、是非ともご覧いただければと思います。また、おきみゅーは共催機関として名前を連ねておりますので、シンポジウムを聴いて、当館の常設展示をご覧いただければより、琉球史の奥行きを感じ取ることができると思います。
山元貴継氏報告の様子(シンポジウム『形から見たグスクの原点を探る』)
討論の様子(シンポジウム『形から見たグスクの原点を探る』)
会場の様子(シンポジウム『形から見たグスクの原点を探る』)
主任学芸員 山本正昭