8月10日まで博物館コレクション展「博物館の秘蔵品」を開催する予定でしたが、新型コロナウィルスの感染拡大にともなう沖縄県の緊急事態宣言により、止む無く会期途中の8月1-日で閉幕となりました。ここで裏話を紹介したいと思います。
観覧された方はおそらく感じたと思いますが、実は考古資料の展示エリアだけが、他と違い異質な光景を醸し出していました(写真1)。その原因は古墳時代の展示をメインとしており、沖縄的な色を一切、出さなかったことにあります。
古墳から出土する須恵器や土師器、埴輪の南限は南九州地方までとなっており、沖縄本島まで運ばれていません。そもそも古墳時代の文化がほとんど琉球列島に及んでいないことから、日本列島と海を隔てて全く異なる文化が琉球列島には存在していたと言うことができます。それは生業が狩猟・漁労を中心としており、金属器もあまり普及しておらず、土器や貝製品、石器といった道具が未だに主流であったことが解っています。ただし、南海産の貝を求めて日本本土から人々が往来していたことから、全く交流が行われていなかったわけではありません。
おきみゅーには様々な経緯をたどって所蔵された古墳時代の須恵器や土師器、埴輪、鉄鏃など約30点があります。今回の展示コンセプトは秘蔵資料ということで、これまでに展示されていない所蔵資料ということと、この機会でないと今後、公開することは中々無いことを慮って、これら古墳時代の資料をまとめて蔵出しすることにしました。賛否両論あると思いますが、ご容赦賜りたく思います。
琉球列島にはあって日本列島には存在していない遺跡は多くありますが、またその逆も多くあります。古墳は教科書に出てくる遺跡の中でもかなり有名です(写真2)。しかし、沖縄県内に住んでいると見る機会が全くないため、どうしてもイメージするには限界があります。少しでも古墳のイメージが膨らむように古墳から出土する須恵器や土師器、埴輪、鉄鏃の実物をぜひご覧いただければと思います。そして、あまり有名ではない穴場的な全国の古墳を紹介した写真スライドを流していました(写真3)。紹介している一部として有名どころは、埼玉県の埼玉古墳群くらいで他は大阪府の三嶋野古墳群、熊本県の塚原古墳群、千葉県の古墳群、兵庫県の平荘湖古墳群、岐阜県の昼神大塚古墳など、初めて聞く名前の古墳が多いと思います。こちらも、古墳には色々な形があることを知っていただくと共に、今に残る古墳の姿を見ていただくために、有名な古墳は外したかたちで紹介しました。
本展示会は予期せぬ早期閉幕となってしまいましたが、何十年後かにこれら古墳時代の資料が再び、皆様にお目に触れればと期待しております。
写真1 展示風景
写真2 今城塚(いましろづか)古墳の墳丘
写真3 写真スライド展示
主任学芸員 山本正昭