1. 四季翎毛花卉図巻(模造復元品)

四季翎毛花卉図巻(模造復元品)

最終更新日:2020.05.28

 あの絵巻が、ついに完成しました。7メートルを超える長い1枚の絹に、鮮やかな花々と、生き生きとした鳥たちが描かれています。琉球王国文化遺産集積・再興事業にて模造復元した「四季翎毛花卉図巻(しきれいもうかきずかん)」です。
 この作品の模造復元を始めたのは、平成28年です。戦前に鎌倉芳太郎が撮影した山口〔神谷〕宗季(唐名:呉師虔(ごしけん))筆「四季翎毛花卉図巻」を復元するにあたり、調査を進めていたところ、写真と寸分違わぬ孫億(そんおく)筆「花鳥図巻」が現存することがわかりました。呉師虔の「四季翎毛花卉図巻」は、孫億の絵画を模写した可能性が高いとして、復元の手本とすることが決まりました。
 現在、孫億筆「花鳥図巻」は、九州国立博物館が所蔵しています。「四季翎毛花卉図巻」は、「花鳥図巻」を原資料として研究し、およそ4年かけて完成した大作です。「花鳥図巻」は、かつて琉球国王家の所蔵品で、当時の絵師の手本として大切にされていたという伝来があります。完成した「四季翎毛花卉図巻」は、研究者と画家が調査研究を重ね、当時の技法と材料によって復元することを目指して作り上げました。
 この作品の見どころを3つご紹介します。1つ目は、中国絵画の技法による細かい表現です。とても細い墨の線で輪郭を描き、何度も色を重ねて奥行のある表現をしています。色材は原資料の科学分析結果をもとに、鉛白(えんぱく)(白)、群青(ぐんじょう)や藍(青)、緑青(ろくしょう)(緑)、臙脂(えんじ)(ピンク)などを使っています。また、この作品は絹に描かれていますが、実は部分的に絹の表だけでなく裏からも色を塗っているという秘密があります。「裏彩色」という技法です。裏から透けて見える色の効果により、豊かな表現ができていると思われます。
 2つ目は、描かれているのが、実在する鳥や花だということです。お馴染みのスズメやハトに加え、サンジャクやキンケイといった異国に生息する色鮮やかな鳥が写実的に描かれています。モデルを探しながら、写真と見比べて見るのも楽しいと思います。
 3つ目は、なんといってもこの長さです。驚きなのは、つなぎ目がない1枚の絹に描いていることです。これだけ長さのある絵巻だと、別々の紙や絹を何枚か目立たないようにつなぎ合わせて仕上げることが一般的ですが、原資料の「花鳥図巻」はつなぎ目が全くありませんでした。1枚に描くということは、失敗が許されないですし、動かないように押さえるのも大変です。復元する際には、長い絹をどうやって固定して描くか、試行錯誤の繰り返しでした。
 「四季翎毛花卉図巻」は、調査研究を重ねたうえで、高い技術を持つ現代の画家が丹精込めて描き上げました。この作品を、6月28日までの期間限定で、常設展示室にて展示します。初公開となる今回は、全長 7 メートルの絵巻をすべて広げて展示します。現代の手わざで復元された美しい花鳥の描写をお見逃しなく!


展示風景


模造復元した「四季翎毛花卉図巻」
 

主任 篠原あかね

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