最終更新日:2015.05.28
博物館や美術館、水族館で働く人は学芸員と呼ばれます。「博物館で働いています。」と自己紹介すると、エントランスや展示室にいつも居るとよく誤解されます。私達、学芸員は表(展示室など)で仕事をすることは殆どありません。実は博物館のバックヤードが私達の仕事場です。
学芸員の仕事には収蔵される資料の「収集・保管」、資料を整理しながら分析したりする「調査・研究」、そして資料を広く公開する「教育普及」があります。ここでは資料を普及する仕事の一つである展示をつくっていく作業を紹介します。
展示の作業をする前に、大事なことがあります。展示の内容を考え、展示する資料を決め、どこに何を陳列するのか展示設計をします。その図面を見ながら、がらんどうの展示室に壁をつくり、可動式の展示ケースや展示ステージなど(展示具)を設置していきます。
資料は、同じようなものをくり返し展示すると、来館者は次第に飽きてきて、観点が分からなります。それを防ぐために、展示の動線を考え、展示する資料の大きさやケースの大小や形状を考えながら配置していきます。と、言うことは、私達学芸員は展示する資料の形や寸法などを全て知っていなければならないという事です。
資料はその形状や素材などによって、床面に置くか、壁に掛けるかを決めます。資料の安全を考えてケース内での展示が殆どですが、展示内容や資料の意味を考えて、壁に掛けたり、天井から吊るすこともあります。このような展示を裸展示と呼んでいます。
展示のためには様々な演示具があります。どれを使い、どのように設置したら来館者に展示の意図が伝えられるか、そこは学芸員の見せ所でもあります。
資料を永く保存するためには、光に長く晒すことや、温度や湿度の急激な変化や汚れ、破損の危険などから資料を守らねばなりません。しかし、展示するとこれらのリスクが大きくなります。どのようにしてそのリスクから資料を守るのか…、それも学芸員の仕事です。展示室を暗くし、ケース内に設置するのはそのためです。リスクが大きいと感じたら展示しないと判断するのも私達の大きな役割です。
今回の平成27年度博物館企画展「うちくい-沖縄のふろしき-」の場合は、博物館の学芸員総動員で作業をしました。展示によっては展示業者といっしょに作業することもありますが、学芸員が展示全体を把握し作業を進めることは基本です。しかし、米国などでは展示内容を考えるキュレーターと展示をデザインし、作業する担当は完全に分かれていますどちらが良いのか…、それは一概に言えませんが、洋の東西を問わず、展示の主役は博物館資料、学芸員は裏方ということには変わりありません。
主任学芸員 與那嶺一子